研究概要 |
研究代表者の加野は,前年度に試作した装置の性能向上,機能追加を行った.研究分担者の森垣と共に,PDMS製フローセルの試作,改良を行い,安定的に試料を導入する機構を組み込みを行った.送液時に,注入する溶液試料の量と排出する量をバランスさせることにより,圧力変化に起因する考えられる屈折率変化を十分に抑制することに成功した.また,断面積の小さな流路で検証実験を行い,ウイルス検出実験に必要となる検体量が減少することを実験によって確認した.また,基板上に配置した微小物体と局所励起表面プラズモンの相互作用を検証することを目的に,FDTD法を用いた計算プログラムの改良を継続した.その結果,表面プラズモンを円形瞳照明法や輪帯瞳照明法の元で,放射状偏光など任意の偏光を用いて励起する場合のシミュレーションを行うことができるようになった. 研究分担者の長谷川は,無毒化したH1N1型のインフルエンザウイルスを始めさまざまなサブタイプのインフルエンザウイルスの精製とモノクロナール抗体の作製を行い,加野と共に試作装置を用いて,これらの抗原抗体反応の検出実験を行った.表面プラズモンを励起する金属材料に金を用い,その表面にアビジンを結合させ,これにビオチン化させたモノクロナール抗体を結合させた.ここにウイルスを含む検体を流し込み,抗体に反応するウイルスがもたらす屈折率変化を測定した.先に述べたように試作装置の安定化によって,屈折率変動の再現性が大幅に高まったため,特定のサブタイプのウイルスのみを検出可能であることを実験的に確認できた.
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今後の研究の推進方策 |
試作装置の屈折率分解能向上や動作速度向上などに取り組みつつ,微量溶液の送液自動化等を実現する.検出限界等を重点的に検証しつつ,より実用に近い条件を与え,測定法の実効性を検証する.さらに,基板表面にウイルス認識部位の固定を試み,さまざまな条件下でウイルスとの相互作用測定を行うことで,感染性過程解析における装置の有用性を評価する.その他,基板下方からの照明による基板表面の屈折率像と,基板上方からの照明による蛍光像の比較により.屈折率像の妥当性検証を進める.理論計算においては,基板上に微小物体を配置することによって反射光空間周波数スペクトルに生じる変化を検討し,局所励起表面プラズモンとウイルスの相互作用がもたらす影響について知見を得る.
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