研究概要 |
多焦点コヒーレシトアンチストークスラマン散乱(CARS)顕微鏡とレーザーアブレーション法を組み合わせ,生細胞の細胞膜の破壊とその修復過程のリアルタイム観測を行った.細胞内脂質を可視化する2840cm^<-1>で観測すると,細胞膜が破壊された後に,アブレーション光集光スポット付近でCARS光強度が上昇することが観測された.培養液中のCaイオンを取り除いた場合,このような信号の上昇は見られず,逆に信号が低下したスポットが観測された.Caイオンは毒性が高いため,細胞質中の小胞がCaイオンの流入に伴い傷口を塞ぐように集まり,各々融合することでCaイオンの流入を防ぐことが知られているが,この信号上昇は細胞質中の小胞が集まることによるものであると考えられる.また,数十秒かけてこの信号上昇は減衰することも観測されたが,これは小胞が融合することによるものと考えられる また,多焦点CARS顕微鏡による観測と単焦点顕微鏡たよる観測のどちらが細胞への影響が大きいか実験的に検討した.多焦点による並列励起・観測により,同一CARS光信号を得るためには,多焦点CARS顕微鏡は単焦点顕微鏡に比べて,1スポット当たりの励起光強度を小さくすることができるが,総投入光パワーは逆に大きくなる.そこで,同一CARS信号が期待できる条件で細胞への光ダメージ比較実験を行った.この結果,多焦点CARS顕微鏡が単焦点CARS顕微鏡に比べて光ダメージが少ない傾向が得られた.今後,よりデータを蓄積し,多焦点CARS顕微鏡の優位性を確証する
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