研究概要 |
レーザーマニュピレーション,レーザーアブレーションを狙った箇所に照射するために,照射位置を面内方向はガルバノミラー対によって,光軸方向は電動ステージ上に置いたレンズによってコンピュータ制御し,アブレーション用のレーザー光の強度を弱め,共焦点光学系により細胞の形状を観測してから狙った位置に高強度のレーザー光を照射できるようなシステムの設計を行った.超短パルスレーザーのモードロッカーを制御することで,フォムト秒レーザーとCWレーザーに切り替え可能なものとした. 高速波長可変多焦点CARS顕微鏡の開発を行い,100ms程度で60nm(800cm-1)の波長走査が可能なシステムを構築した/また,脂肪細胞を用いて,マイクロレンズアレイによってその脂肪分布を30msで十分イメージング可能なことを確認した. 培養液中の脂質を重水素化したもので細胞を培養し,エンドサイトーシスによって細胞内に重水素化した培養液を取り込ませ,重水素化した培養液を含む小胞の観察を行った.CD2伸縮振動は2100cm-1付近に現れ,これを観測することで小胞の動きを可視化できた.また,CARSと色素の二光子蛍光を同時に観測できるシステムに改造し,マルチモーダル観測することが可能となった. 今後,高精度にレーザー光によって細胞を刺激しその応答を観測する.また,細胞だけでなく,光放射圧によって形成されるタンパク質結晶の形成過程観測等へ応用していく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
反射共焦点を観測し,かつ光軸方向まで独立に集光位置を移動することが可能な光学系の構築に時間を要したものの,高速波長走査レーザーの開発,細胞培養系が確立され,概ね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は最終年度であるため,アプリケーションの開拓へ力を入れたい.特に,レーザーマニュピレーションを行うことが可能となるために,完全な細胞膜や組織の破壊を行った際の反応を観測するだけでなく,レーザーマニュピレーションにより微小な粒子を細胞膜に擦りつけたり,引っ張ったりすることで起きる,細胞膜の硬化や,細胞内へCa2+の流入時の細胞膜の応答について観測を行う.また,光圧による分子集合の様子のリアルタイムCARS観測だけでなく,SHG同時観測による結晶化の進行について研究を行いたい.
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