研究概要 |
前年度開発した,レーザーマニュピレーションあるいはレーザーアブレーション用のレーザービームを狙った箇所に照射しながら,コヒーレントアンチストークスラマン散乱(CARS)信号を高速に取得可能なシステムを用いて,光放射圧によって形成される結晶の形成過程観測を行った.試料には,尿素飽和溶液を用い,CN伸縮振動 1000 cm-1の観測を行った.結晶化用レーザー光には,CWチタンサファイアレーザー(800 nm, 900 mW, CW)を用い,透過光およびCARSイメージのリアルタイム観測を行った. 既に形成された結晶付近にレーザー光を集光したところ,結晶の成長よりもむしろ結晶の消失が観測された.これは照射レーザー光の吸収による温度上昇の影響であると思われる.そこで,溶媒には重水を用い,結晶化用レーザー光を溶液-ガラス界面(ガラスは試料セル)に集光したところ,集光約50秒後, CARS光強度の急激な上昇と,約100秒間に渡る緩やかな上昇が観測された.この変化は透過光強度には現れず,光放射圧による分子濃度上昇が観測された結果であると推察することができる.またレーザー照射7分に,約3分間に渡る大きなCARS光の上昇と,透過光強度の減少が見られた.CARS光強度変化は矩形的であり,急激なCARS光変化が観測された.動画には焦点付近に移動してくる様子は見られなかったため,集光点以外で形成された微結晶がトラップされた可能性は低く,放射圧による結晶核形成とその成長の様子が観測されたものと考えられる.
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