研究概要 |
1.光周波数コムの高度化のためのカーボンナノチューブファイバレーザーの解析と開発 これまでに,カーボンナノチューブを可飽和吸収体に用いたファイバレーザーを用いて,光周波数コムシステムを開発した.しかし,光周波数コムの応用において重要な,fceoの線幅は,非線形偏波回転を用いたものよりも太く,その改善が必要であった. 今年度は,光周波数コムシステムの改善を図るため,キーとなる種光源であるカーボンナノチューブファイバレーザーの高度化に取り組んだ.まず,カーボンナノチューブファイバレーザーの数値解析モデルを構築し,ナノチューブを用いた時の受動モード同期の過程や,共振器構成に対する出力パルスの特性の変化を解析した.その結果,共振器が異常分散によるソリトンモード同期の状態にある場合には,パルスが分散波による背景雑音成分を持つことが分かった.また,高出力化の鍵となる,共振器の分散値の制御が可能な構成を見出すことができた.更に,その知見を元に実験的に共振器の分散制御に取り組み,大きな正常分散を用いて散逸性ソリトンモード同期の動作を実現し,これまでの約20倍の高出力化を図ることに成功した.最大平均出力210mWを得た. 2.カーボンナノチューブファイバレーザーを用いた光周波数コムシステムの開発 上記と並行し,開発したカーボンナノチューブファイバレーザーを用いた光周波数ヲムシステムの開発と高度化に取り組んだ.まず,分散波の影響を抑えるため,ナノチューブファイバレーザーの出力の取り出し効率をこれまでの85%から50%に変更した.また,励起LDの雑音を抑えるため,励起LDからEr添加ファイバの間の光損失を増やす構成とした.現在,1オクターブ広がるスーパーコンティニューム光の生成のため,ファイバ型超短パルス光増幅器の最適化を進めているところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ベースとなる超短パルスファイバレーザー光源の開発は,世界最大出力の達成や,初めてに数値解析モデルの構築により,当初の計画以上の成果を挙げている.また,光周波数コムシステムや高精度SC光の生成もほぼ達成している.
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今後の研究の推進方策 |
開発し,高度化を図ったファイバレーザー光源を活用して,光周波数コムシステムの高度化を図る.また,生成した高精度SC光に関し,数値解析と実験を並行して行うことで,分散補償を実現し,極短パルスの生成を実現する.
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