研究概要 |
微細深溝構造に銅を充填する技術として、テトラクロロ金(III)酸溶液を使って微細構造内に触媒層を形成し、ボトム・アップ無電解銅メッキ法によって微細深溝構造に銅を充填する技術を確立した。この技術を使って、開口幅200nm、深さ2μmのシリコン深溝構造に金属を充填することが可能となり、SOI基板のトップシリコン層に金属/誘電体多層構造を形成した。とくに、本研究の当初目標である金属/誘電体多層構造をもつ微小分光プリズム(1辺が10μmの3角形状)を試作した。また、この作製技術の応用として、石英基板上に10mm×10mmの面積をもつ金属/誘電体多層構造を作製し、これが高性能な近赤外線用ワイヤグリッド偏光子として機能することを実証した。この偏光子の消光比は、波長1.5μmにおいて約1,000であった。 素子の設計においては、金属/誘電体多層構造の表面での光反射率を概算する手法として、金属微細周期構造を有効媒質ととらえて反射率を計算する方法を新たに考案した。有効媒質の考えに基づく計算方法はこれまでにも存在したが、金属微細構造がもつ強い光学異方性を本格的に取り入れた計算理論は本研究が始めてであり、従来の方法では正しく求めることができなかった斜め入射における反射率の計算が行えるようになった。また、この計算理論は、金属を含まず、誘電体だけで構成される微細周期構造にも適用できるものである。 その他、試作した素子の光学特性を調べるための評価装置を構築し、シリコン光導波路内での光の振る舞いを観察できるようにした。
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