研究課題/領域番号 |
22360032
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
竹内 淳 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80298140)
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キーワード | 半導体 / 薄膜・量子構造 / 光物件 / エピタキシャル成長 |
研究概要 |
InAsコラムナー量子ドットのスピン緩和時間を円偏光時間分解フォトルミネッセンス測定によって綱べた。サンプルは、InAsを1.8原子層積層しシードドットを形成したのち、量子ドットを3層積層したものと、35層積層したものの二種類である。3層積層したコラムナー量子ドットは、50K以下では速いスピン緩和と遅いスピン緩和の二成分を持ち、100Kと150Kでは単一指数関数で近似できた。また、35層積層のコラムナー最子ドットでは、10-140Kで二成分のスピン緩和を持っていた。遅いスピン緩和は、10Kで3.42nsから130Kで0.849nsと大きく変化したが、通常の量子ドットと同じく音響フォノン散乱を考慮するElliott-Yafet効果で近似可能であることがわかった。速いスピン緩和は100Ps程度と高速であり、温度依存性を持たないことが明らかになった。このことから、速い緩和はBir-Aronov-Pikus効果が支配的であることが明らかになった。円偏光フォトダイオードへの応用においては、長いスピン緩和時間が望ましいため、この遅いスピン緩和の成分を大きくする方法を探索する必要がある。本年度はまた、高均一量子ドットのスピン緩和過程をポンプ・プローブ法による時間分解測定によって観測した。その結果、量子ビートが観測されることが明らかになった。これは量子ドットの面内異方性に起因するものと考えられ、量子ドットが高均一であるため、多数の量予ドット集団を観測したにもかかわらず、量子ビートの観測が可能になったものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
円偏光光源として量子ドットを用いるためにはスピン緩和時間は長い方が望ましい。したがって、本年度の研究において、35層積層のコラムナー量子ドットにおいて10Kで3.42nsという長いスピン緩和時間が観測されたことは、研究上の意義が大きい。
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今後の研究の推進方策 |
35層積層のコラムナー量子ドットにおいて10Kで3.42nsという長いスピン緩和時間が観測されたが、第二成分の緩和であることと、低温での観測にとどまることから、さらにスピン緩和メカニズムの解明を進める必要がある。また、高均一量子ドットや他の材料系でのスピン緩和メカニズムの解明によって、その長時間化と,より高いスピン偏極率の実現に取り組む。
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