円偏光発光ダイオードの活性層の候補である高均一量子ドットの面内異方性をフォトルミネッセンス測定で調べた。高均一量子ドットは、基底準位のフォトルミネッセンス半値幅が21meVと非常に狭いという特徴を持つ。その結果、基底準位、第一励起準位、第二励起準位において、いずれも楕円偏光となっていることが明らかになった。これは量子ドットの面内異方性に起因するものと考えられる。これらの直線偏光度は基底準位が最も大きく、次いで第一励起準位、第二励起準位と小さくなることが明らかになった。また、時間分解フォトルミネッセンス計測により、これらの直線偏光度が計測時間範囲内(数ナノ秒)で極めて安定であることも分かった。量子ドットの励起準位での面内異方性が観測されたのはこれが初めてであり、円偏光発光ダイオードの活性層に量子ドットを用いる際の偏光特性に関する重要な知見が得られた。 量子ドット以外の活性層の候補として、Ge基板上に成長した高SiドープGaInPのスピン緩和過程も調べた。サンプルは<111>面から9度傾けたGeオフ基板上にSiドープした(2 x 10 18cm-3)GaInPをMOCVD法によって成長した。10Kでは、波長687nm付近にドナーアクセプタ対によるフォトルミネッセンスが観測され、波長654nmにバンド間遷移のフォトルミネッセンスが観測された。円偏光時間分解フォトルミネッセンス計測では、波長654nmの発光にスピン偏極は観測されなかったが、波長687nmのドナーアクセプタ対の発光では明瞭なスピン偏極が観測され(光励起直後で7%)、そのスピン緩和時間が210nsと極めて長いことが明らかになった。このスピン緩和時間は、これまでに報告されたIII-V族化合物半導体のスピン緩和時間の中では最も長いものの一つであり、円偏光発光ダイオードへの応用の高いポテンシャルを示している。
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