研究課題/領域番号 |
22360035
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
人見 啓太朗 東北大学, サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター, 准教授 (60382660)
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キーワード | 臭化タリウム / PET / 半導体検出器 / 帯域精製法 / 結晶成長 / ガンマ線検出器 / 放射線計測 / 化合物半導体 |
研究概要 |
全身用PET装置のための臭化タリウム(TIBr)半導体センサーの実用化のため、平成23年度はTIBr半導体結晶の育成条件の最適化を行った。半導体センサーは入射放射線により生成される電荷を直接電気信号として取り出すため、センサー製作には電荷輸送特性が良い高品質の結晶が求められる。前年度までに開発した真空蒸留装置、水平帯溶融炉を用いてTIBr素材の純化、結晶育成を行った。特に素材の帯域精製回数をパラメータとして結晶育成を行い、育成条件の最適化を行った。育成した結晶からガンマ線センサーを製作し、結晶中の担体の電荷輸送特性やセンサーのガンマ線に対するエネルギー分解能の測定を行い、育成した結晶の評価を行った。電極面積2mm×2mm、厚さ4.4mmの単極性電荷有感型のTIB検出器を用いて結晶中の電子の移動度、寿命時間の測定を行った。育成したTIBr結晶中の電子の移動度は24.2cm^2/Vsであった。また、電子の移動度-寿命時間積は2.1×10^<3>cm^2/Vであった。育成したTIBr結晶は半導体検出器材料として実用化されているテルル化カドミウム(CdTe)に匹敵する移動度-寿命時間積を示した。これは最適化した育成条件により長い担体寿命時間を持つ高品質のTIBr結晶が育成された事を示す。このTIBrセンサーは^<137>Csからの662keVのガンマ線に対し2.7%という高いエネルギー分解能を示した。センサーに使用した結晶の体積が比較的大きいにも関わらず、高いエネルギー分解能が得られたことから、一様性の高い結晶が育成できたことがわかる。本年度の研究により結晶性が高く一様なTIBr結晶の育成条件を確立することができ、次年度以降の研究に繋がる成果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの研究により結晶性が高く一様なTIBr結晶の育成条件を確立することができ、本研究の目的である全身用PET装置のためのTIBr半導体センサーの実用化に繋がる成果が得られているため。
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今後の研究の推進方策 |
最適化された育成条件の下でTIBr結晶の育成を行い、センサー製作条件の最適化を行う。結晶の表面処理方法、電極の形成方法を検討し、高い安定性、高い時間分解能を示すTIBrセンサーの開発を行う。具体的にはTlBr結晶の化学エッチング条件、電極蒸着時の結晶基板温度等によるセンサーの安定性、印加電圧に対する耐久性についての影響を調べる。さらに結晶育成方法についても検討を行い、新しい純化方法の素材への適用、結晶育成時の雰囲気ガスの検討を行い、TlBr半導体センサーの実用化を目指す。
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