研究課題/領域番号 |
22360036
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
酒井 啓司 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (00215584)
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キーワード | 微小液滴 / レオロジー / 界面吸着現象 / 衝撃波吐出 / ストロボ顕微測定 / 粘弾性測定 / 動的表面張力 |
研究概要 |
液晶やゲル、ミセルや分子膜など分子集合体が形成する生体系などの複雑流体は、自己組織化的に高度に秩序化された内部構造を形成する。これらの物質群はソフトマテリアルとも呼称されるように、温度や電場・磁場などの外的刺激に応じて容易にその構造を変化させ、さまざまな機能を発現する。近年、これらの性質を新しいミクロデバイス材料へと応用しようとする試みが盛んに進められている。本研究の目的は、我々がこれまでに培ってきた微小液滴の吐出・衝突・融合化技術ならびにその変形・回転運動の高時間分解能観察手法を用いて、μmサイズの流体のレオロジー物性を研究する「超高速変形ナノレオロジー計測工学」を創生し、その基本要素技術を産業界における汎用の計測ツールとして供与することを目的とする。本年度は、昨年度までに開発された高速液滴生成システムにより作製されたピコリットル液滴について、空間に局所電場を印加することによりマックスウエル応力を及ぼして液滴を静止させる技術、および液滴に変形を加える技術を開発した。これにより生成した液滴を保持しつつ、これに随時変形を与えてその後の振動状態を観察することが可能になった。この振動状態の時間変化は液体表面生成後の表面張力の時間変化という極めて重要な情報を与える。これを用いていくつかの界面活性剤溶液の動的表面長禄を測定し、最大法圧法などを用いたこれまでの研究結果と比較することにより、液面での分子吸着膜形成ダイナミクスに関する知見を得ることができた。またポリマー被膜の微小カプセルの生成に着手し、大気中で安定なカプセル構造が作製される条件を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標であった人工カプセルの生成にはおおむね成功し、かつ当初の計画にはなかった液滴マニピュレーションによる高速液体物性測定法の着想など新たな成果が生まれた。
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今後の研究の推進方策 |
生成されたカプセル構造などを顕微観察する光散乱測定法を確立し、工学技術としての完成度を評価した後、研究成果のとりまとめを行う。
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