本研究目的は、超音波の高い内部透過性を活かした電気・磁気特性の無侵襲イメージング技術を開拓することである。提案する計測原理は、「超音波集束ビームにより対象物内の電荷(あるいは磁化)に時間・空間変調を与え、それに伴い発振される電磁放射を検出し、対象物に内在する電気(あるいは磁気)情報を獲得すること」である。応募者のこれまでの基礎研究を発展させて、(1)放射分布測定システムの構築、(2)超伝導量子干渉素子(SQUID)を用いた超高感度な電波検出技術の確立を達成し、材料評価への応用と医療診断への可能性を追求することを目的とする。 (1)において、圧電体(GaAs)およびフェライト磁性体に対して音響誘起電磁放射信号のアンテナ配置依存性を詳細に測定し、音波と電磁波との結合に新たな知見が見出された。また、8チャンネル高速デジタイザーの導入によって、高速に波形取り込みが可能であること、二つのアンテナからの信号を取り込むことによりS/N比が改善されること、を確認した。特に、オーステナイト系ステンレス合金のマルテンサイト転移を超音波測定により画像化できることを示した。また、引張り試験機を用いて、圧力印加過程における磁化発現の様子を超音波でリアルタイム検出することにも成功した。 (2)において、SQUIDと狭帯域LC回路を結合させる試験実験を行った。その結果、SQUIDに組み込まれた内蔵コイルを考慮した低ノイズLC回路が必要であることがわかった。
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