研究概要 |
繰返し負荷が作用する部位においては,疲労損傷に対する残存寿命評価および延命対策などの保全,維持基準技術の確立が重要課題となっている.本研究では,X線を用いて疲労過程における変形・損傷挙動を検出することを目的とし,本年度は以下のことを明らかにした. (1)現有のX線発生装置に装着可能な,その場観察用繰返し負荷装置を新規に試作開発した.負荷には空気圧を利用し,周波数1~10Hz,最大負荷荷重100N以上とし,一定負荷荷重での保持が可能な仕様を目指した。今年度は本装置の特性を明らかにするとともに,仕様を満足することを確認した.また,厚さ50ミクロンのSUS304および厚さ20ミクロンのCu箔を用いて,静的および繰返し負荷での変形挙動について検討し,変形とともにX線パラメータが変化することを見出した.今後負荷繰返しに伴うパラメータ変化の定量的評価法について検討する. (2)これまでに報告された炭素鋼配管の繰り返し負荷実験を対象に,有限要素解析を用いて延性消耗と疲労損傷の分布を評価して変形/破壊挙動について検討した.また,実際に加振試験を受けた配管を入手してき裂発生箇所近傍の損傷状態について確認した.今後,損傷を受けた箇所とそれ以外の箇所からそれぞれ微小試料を切り出し,より微視的な損傷挙動について検証する. (3)Cuを対象にして繰り返しすべり摩擦をうける箇所を定点その場観察することで初期のき裂発生を特定した.また,有限要素解析からすべり変形によるひずみ変化を算出しき裂発生回数との関係を明らかにした. (4)EBSD法によって実験的に得られる結晶情報から,自動的に有限要素解析のためのメッシュ作製が可能なシステムを構築した.これを用いて結晶方位を考慮した応力解析を行い,その有効性を確認した.
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