研究概要 |
本研究では,複合材料の微視的な繊維束内樹脂含浸を対象として,炭素繊維表面における高分子鎖と表面の相互作用のモデリングを行い,単繊維の束を対象として表面張力卓越流れとしての樹脂含浸の解析を行う.次に,マイクロ流路を用いた実験と微視的その場観察によって検証とモデルへのフィードバックを行う.最後に個々の繊維配置を考慮したマイクロメカニクス解析と結合し,繊維直角方向負荷における微視的な界面破壊発生で強度信頼性を表現し,その高性能化との関係を明らかにすることを目的としている.本年度は,単繊維及び微視繊維束への樹脂含浸実験について取り組んだ.成果は次のように要約される. 1)マイクロ流路の作製 PDMSを用いて,マスクをレジストに転写した鋳型をSU-8を用いて作製した.次に,この鋳型にPDMSを流し込み,マイクロ流路のモデルにおける,流路と繊維を模擬した円柱ポストを作製した. 2)マイクロ流路モデルの円柱ポストの寸法の決定 円柱ポストの寸法については,マイクロ流路の製造時の精度と円柱の最小間隔,形状精度を鑑み,繊維間距離を20μm,繊維直径を200μmとした. 3)マイクロ流路モデルにおける円柱の配置は.六方配置において方向の具なる2種のモデルを作製した.円柱の数は13とし,幅方向に3列,長手方向に4~5個配置した. 4)モデル中の微視的な円柱配置とボイド発生の関係 動粘度が100csおよび1000csの場合,流路方向に近接する2本の円柱の間でボイドが発生した.また,動粘度が10000cdの場合,近接する3円柱間において稀にボイドが発生した. 5)ボイド発生メカニズム 流路方向に近接する2円柱間でのボイド発生は,円柱を回りこむ気液界面の対称性が重要な因子であることがわかった.ボイドは気液界面が対称に近い場合のみ発生する.ただし,粘性が高く流速が低い場合,気液界面が対称でも,円柱間距離と界面の形状により,ボイドが発生しない場合もあることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,研究の問題点を絞り込むため,計画を若干変更して,実際の繊維束内の繊維配置に近い,六角形配列の円柱モデルで,まず,基本となる粘性や流速を変え,ボイド発生と流れ,特に気液界面の運動との関係を検討した.その結果,流路方向に近接する円柱における気液界面の対称性等,ボイド発生の重要な因子を見出し,目的に向けて十分な進捗が見られた.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において,気液界面の対称性,流速,粘性,繊維(円柱)間距離が,ボイド発生の重要な因子であることがわかった.これに基づき,最終年度である次年度は,二円柱モデルにおいて円柱間隔を変えること,繊維束モデルにおいて一部の繊維を抜いたモデルなどを用いて,ボイド発生を決定する閾値の検討を行い,研究をまとめる予定である.
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