未来材料の構造健全性を予測可能にする創造的な計算力学的方法論の実現には、基礎となる理論やアルゴリズムが研究者の想定外の結果を発見できる能力を有しており、かつ、現象のモデリングに対して解析者の先験的な知識を必要としない方法論の構築が望まれる。その一方で、実用的な解析法たるには計算結果の信頼性の保証や誤差評価が可能で、解析者が目標として設定する強度をできるだけ精度良くかつ効率的に獲得できるようアダプティブに自ら適切な方法論を作り出していく理論体系の構築が望まれる。このような広い要求を実現するために、本研究課題では、方程式フリー法(equation-free method; EFM)に基づく発見的な方法論に目標指向適応局所解(goal oriented adaptive local solutions; Goals) によるモデリング誤差評価の考え方を適用することにより、目標指向型の精度保証を行いつつシミュレーションの持つ新発見性を有する学術研究の方法論としての計算固体力学理論を構築することを目的としている。 平成24年度は、結合界面の微視構造の階層性と離散性を考慮した解析モデルにCohesive則を導入し、き裂進展シミュレーションによって破壊じん性を評価した。また、高次格子欠陥を用いた有限変形解析を実施した。さらに、内部構造を有するはりの曲げ変形に対して直接解析と古典弾性論解析、および、マイクロポーラー理論による解析結果を比較し、端部の変位とひずみエネルギーを関心量とした場合の目標指向型モデリングの有効性を示した。一方、方程式フリー法を用いて、柱の圧縮、および、せん断変形時の弾性波の伝ぱ解析が可能であることを明らかにするとともに、粘性効果の導入により静力学解析が可能になることを明らかにした。以上を総括して新しい理論の基礎を構築することができた。
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