研究概要 |
環境負荷低減が地球規模で叫ばれる中,天然繊維を強化材とするグリーンコンポジット(Green composites)に注目が集まっている.今年度は,リサイクルが容易なポリプロピレン(以下,PPと略記する)と,天然繊維であるラミー麻を用い,射出成型によりラミー麻/PP複合材料を作製した.作製した複合材料中の繊維を強化するために繰返し引張負荷処理を最大応力の70%で施した.天然繊維はセルロースミクロフィブリル(CMF)が繊維軸に対して螺旋状に配向している.このCMFは繊維内で,ある傾斜角を持って配列しており,繰返し引張負荷処理を施すことによりCMFの配向角が軸方向に傾くことにより,軸方向への強度,剛性を増加させる.使用する樹脂はPP1(高融点樹脂),PP2(低融点樹脂),PP3(低粘度樹脂)の三種類を用いた.初めに樹脂のみの繰返し引張負荷処理については,いずれにおいても処理前後の引張強度,ヤング率に大きな変化が無いことから,樹脂の処理効果は無いと考えられる.一方,複合材料については,いずれにおいても処理後の引張強度,ヤング率が向上しており,処理効果が確認された.これは,処理によって繊維内部のCMFの配向角が軸方向に傾いたことで,軸方向の耐荷能が向上したためと考えられる.繊維強化効果及び引張負荷効果はPP3において最も大きく現れた.低粘度樹脂のため混練時に発生するせん断力が減少し,繊維破断が抑制されて繊維長の低減が抑えられたためと考えられる. 複合材料の一軸での繰返し負荷効果が確認できたため,今年度は二軸引張試験機を用い,二軸繰返し引張負荷処理について研究を行う.使用する試験片は昨年度の結果からPP3の樹脂を用いたRamie/PP3複合材料の使用が適している.一軸繰返し引張負荷は引張方向の繊維は強化されるが引張方向と垂直方向の繊維は強化されない.しかし二軸引張ではあらゆる角度の繊維に負荷をかけられるため繰返し効果はより大きく発揮されると考えられる.そこで,今年度はこの二軸繰返し負荷効果の調査およびメカニズムの解明について研究を行う.
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