本研究(2010年度~2012年度)の目的は、安全性と経済性を両立させた水素エネルギー社会を構築するため、耐水素疲労特性を有する鋼が製造できる指針を確立することにある。 2010年度と2011年度では、次の2点を明らかにした。 (1)低炭素鋼(炭素量0.5mass%)においては、フェライト結晶粒の微細化と、V、M)、Tiの炭化物形成元素の微量添加を組合せることにより、耐水素疲労特性は大幅に向上することを明らかにした。 (2)低合金鋼SM435とSNCM439鋼においては、微細なブロックとCr、Moの炭化物の組合せで耐水素疲労特性が向上することを明らかにした。 本年度(2012年度)はオーステナイト系ステンレス鋼を対象にした。SUS304とSUS316LにNとNbを微量添加した2種類のステンレス鋼は耐水素疲労特性を有し、かつ高強度であることを明らかにした。高強度と耐水素疲労特性の両立は、NとNbが固溶強化元素であることと同時にオーステナイト安定化元素であることによる。これらの2つのステンレス鋼は、すでに70MPa水素ステーションの部品・部材に使用することが開始されている。
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