本年度成果は下記の2種類に大別できる 1:刃物用単結晶SiC製造の為のドーピング元素効果 純チタン、純アルミニウムをターゲットに、無歪表面形成を目的として、結晶成長時に元素点火を行った。目的は、結晶の劈開を少なくすることである。数種類の元素を試し、下記の結果を得た。1-1 チタンドーピング:劈開は極めて少なくなる。一方、摩耗性が高くなり、刃物としては適さない状態となった。1-2 鉄ドーピング:劈開は完全には抑えられないが、純粋な単結晶に比べると、格段にへき開しにくくなる。ダイヤモンドワイヤーソーによる結晶スライス時のカッティングひずみは10μm以内に抑えられ、刃具として適切なドーピング元素の一つと考える。 2:単結晶刃先そのものを加工センサとして形状化した。具体的には、単結晶刃先とロウ付けを行った超硬材料の双方に電極を形成し、シリコンカーバイドの圧電性を利用して、加工時に信号を取り出した。切り込み深さによって出力信号が変わることを確認できたが、目標とした「信号量と加工深さの線形性の実現」までには至らなかった。主原因は加工機(旋盤)のモーターノイズが出力信号に重畳していることが挙げられる。得られた成果を元に、ロックインアンプ等を用いた出力信号取り出しを試みている。超硬台座は金属であるため、容易にオーミック電極を形成できる。シリコンカーバイド側にはオーミック電極を得ることが出来なかったことも、センサとしての線形性を阻害するものであった。鉄元素をドーピングすることによって電子状態が大きく変わっており、単結晶シリコンカーバイドに対するオーミック電極材料とは異なる材料の探査が必要である。
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