研究課題/領域番号 |
22360063
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
難波 義治 中部大学, 工学部, 教授 (40029129)
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研究分担者 |
古澤 彰浩 名古屋大学, 教養教育院, 講師 (20362212)
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キーワード | 国際X線天文台 / 多層膜 / 非球面 / 金型 / レプリカ反射鏡 / 硬X線 / 宇宙 |
研究概要 |
2014年に打上げ予定のASTRO-H衛星搭載用硬X線多層膜望遠鏡(HXT)の開発支援を行うと共に、その次の時代の日米欧共同の多層膜非球面硬X線反射鏡を開発することを研究目的にし、本年度は下記の研究を行なった。 ASTRO-H衛星搭載用硬X線多層膜望遠鏡に関しては、Pt/C硬X線多層膜スーパーミラーにより80keVまで撮像することが目的の一つであり、その光学系に合わせて最適設計した多層膜をガラス円筒金型に成膜するプロセスを確立した。また、多層膜の高い反射率を保ちながら量産する必要があり、ガラス円筒金型の選別法・多層膜成膜法の最適化・アルミニウム基板の成形法・ガラス金型からの多層膜の離型法の開発を主として名古屋大学が行い、試作反射鏡について軌道放射光施設SPring-8で硬X線結像性能を確認した。その結果、X線像の角度分解能が0.6分角から3分角以上と分布し、ガラス円筒金型の形状精度向上と成膜・離型工程の改善が必要であることが明らかとなった。名古屋大学で入手困難な直径の表面粗さ0.3nm rms以下のガラス円筒金型については中部大学で製作・提供した。 非球面金型の超精密研磨に関しては自動化が必須の課題であり、ZEEKO社の超精密非球面研磨装置IRP200を用いて、各種金型材料の平面研磨を行ない、形状精度30nmが得られ、表面粗さに関しては最高値で0.3nm rmsが得られるようになった。しかし、研磨の安定性の観点から表面粗さを安定的に0.3nm rms以下になるようにすることが肝要である。 本年度は、米国のNASA/GSFCおよび欧州のESA/ESTECを訪問し、次世代の多層膜非球面硬X線望遠鏡開発について協力することを確認し、先ず中部大学の非球面金型加工技術とNASA/GSFCのガラス基板成形技術を融合することにより、新しい硬X線望遠鏡用多層膜非球面反射鏡製作技術を開発することになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日米欧との情報交流を行なうと共に、次世代の硬X線望遠鏡用多層膜非球面反射鏡の試作に向けて、合成石英製非球面金型の製作に着手し、NASAでの非球面反射鏡基板の製作の道筋を付けた。本課題のフィードバックとして、ASTRO-H搭載硬X線多層膜望遠鏡の製作を通じた問題点、改善点の洗い出し行っており、製作技術についてはある一定の歩留りで反射鏡を製作できるまでに向上が図られている。
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今後の研究の推進方策 |
中部大学では非球面金型の高精度化を図り、名古屋大学では多層膜の性能向上とASTRO-H用多層膜反射鏡の歩留まり向上を図ると共に、日本のJAXA、アメリカのNASA、ヨーロッパのESAと連携して合成石英製非球面金型を用いた次世代硬X線望遠鏡用多層膜非球面反射鏡の試作を行なう。
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