研究概要 |
2015年に打上げ予定のX線天文衛星ASTRO-H搭載用硬X線多層膜望遠鏡(HXT)の開発支援を行うと共に、次の時代の国際協力の多層膜非球面硬X線反射鏡を開発することを研究目的として、本年度は下記の研究を行った。 ASTRO-Hに搭載する2台のHXTのうち1台を本年度に完成させ、その性能試験をJAXAおよびSpring-8で行った。望遠鏡の有効面積は想定通りの結果が得られているが、結像性能についてはある範囲のX線エネルギーにおいて想定した性能に達していないことが判明した。局所的な性能を反射鏡半径毎に調べたところ、主に径の大きい反射鏡の結像性能の低下が明らかになった。反射鏡製作段階での性能は確認されているため、性能悪化が望遠鏡ハウジングに組み込まれた状態で生じていると考えられ、反射鏡自体の剛性の低さもしくはハウジングへの固定法に問題があると予想される。これらの知見は、使用している多層膜技術の有用性を示すと共に、非球面反射鏡の性能を望遠鏡に組み込んだ状態で発揮させる上で非常に重要な問題を提起するものである。 欧米の研究機関と国際協力を行うため、NASA/GSFC(Greenbelt, USA)およびOAB(Merate, Italy)を訪問すると共に、先方も中部大学および名古屋大学を訪問し、X線反射鏡用超精密非球面金型製作装置ならびにHXT製作工程を見学すると共にX線望遠鏡製作技術の最前線について講演を行った。 現有の超精密非球面加工装置IRP200を用いて平面金型を研磨した結果、直径100 mmの無電解ニッケル金型については27 nm P-V、一辺150 mm角の合成石英金型については41 nm P-Vの形状精度が得られ、表面粗さ0.3 nm rmsを自動研磨できることを確認した。また、210 mm角の合成石英製放物面金型の研磨で形状誤差100 nm以下を達成した。
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