現在の摩耗機構に関する研究では,摩耗の起源となる摩耗素過程の解明はトライボロジーに残された課題の一つである.本研究は,凝着摩耗の素になる粒子,すなわち摩耗素子の生成を観察し,その生成機構を解明するため原子間力顕微鏡(AFM)などの走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いるとともに,摩耗素子の生成過程をアコースティックエミッション(AE)の発生によって検出する装置を製作し,それらの測定によって摩耗の基礎過程を明らかにすることができた.今年度は最終年度に当たり,平成22年度に購入した走査型プローブ顕微鏡(日本電子JSPM-5200)とアコースティックエミッション測定部を組み合わせる装置として平成23年度に設置したピン・オン・フラット型摩擦試験装置によって摩擦摩耗実験を行った.ピエゾアクチュエータ型微小摩擦試験機を用いて摩擦した摩擦面をSPMによって観察し,金属材料について摩耗素子の生成を確かめルことができた.それと同時にその際に発生するAE信号を解析した.AE信号の解析は、AEエネルギー,微分エネルギー値,AE周波数などについて行い摩耗素過程との対応を明らかにした.本年度に実施した実験によって,その基本になる摩耗の素となる摩耗素子,素子が集合・堆積して生成する移着粒子の発生にともなってAEエネルギーおよび周波数が特異な値に変化することを明らかにすることができた.それらの結果によって,摩耗素子の発生から摩耗過程を明確にしたことから凝着摩耗の摩耗式として理論式を提案することができた.
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