研究概要 |
本研究では,超低摩擦・超耐摩耗のカーボン系硬質膜の静摩擦係数の減少の制御指針を確立することを目的とした。カーボン系硬質膜としてはDLC膜を「表面波励起プラズマと負バイアス電圧を用いた高密度プラズマ発生法(MVP法)」によるプラズマCVD法で,メタンガス,アルゴンガス及びTMS(トリメチルシラン)ガスを種々の割合で原料ガスとし供給し,種々の断面曲線及び材質のDLC膜を作製し、DLC膜の粗さと硬さの評価を行った。その後、SUJ2金属球及びTPEとの大気中で往復摩擦実験を行い、静摩擦係数及び動摩擦係数を明らかにした。具体的に得られた研究成果を以下に示す。 (1) 成膜時間の増加に伴い表面粗さRa及び硬さは増加した.また,負バイアス電圧が高いほど14GPa程度の硬質な膜が得られた. (2) 成膜時間の増加に伴い静摩擦係数及び動摩擦係数は共にわずかに減少した.また,静摩擦係数と動摩擦係数の比は成膜時間及びバイアス電圧により明確な影響は受けなかった. (3) DLCの断面曲線から微小突起の傾斜角を算出し,その平均値と摩擦係数の関係を明らかにした.その結果,平均傾斜角が0.3度以下の小さい範囲では摩擦係数は平均傾斜角に比例するが,それ以上では影響しないことが明らかになった. (4) 成膜時間及びバイアス電圧を変化させただけでは,静摩擦係数を減少させることは困難であることが明らかになった.そのため,静摩擦力を表面粗さの負荷曲線の極表面の材質,雰囲気を変化させ今後検討することとした.
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