研究概要 |
初年度にあたり,実験装置の設計・試作を行い,予備的な実験を行った.主な研究成果は以下のとおりである (1)その場観察の実験装置を完成した.表面性質を変えずに,商用のガラス磁気ディスクから磁気層のみを省いた,透明なハードディスクを用いて,走行中にハードディスクの裏から高速顕微鏡カメラでスライダ空気軸受表面を直接監視し,スライダ空気軸受表面への水蒸気等の凝集をつぶさに観察できる.これはスライダ空気軸受表面汚染機構の解明に大いに期待できる (2)また,エアブロー単分子膜流動測定実験では,PFPE単分子膜は極性のものがハードディスク表面上でマイクロスリップしないのに対して,非極性のものがマイクロスリップを示す.これは従来のスピンオフ実験で観察できないことであった。マイクロスリップはナノ流体力学で重要な現象である.この結果は,マイクロスリップは普遍的な現象ではなく,流体分子と固体表面との結合強度に依存することを示唆している.流体分子が固体表面と強く結合すれば,マイクロスリップは回避できる.また,非極性のPFPEはエアブローされたときに,堆積現象も観察された.これはマイクロスリップ速度の不均一によることが分かった.しかし,マイクロスリップが起こらない流体分子と固体表面との臨界結合強さは何にて決定されるかはいまだ不明である.さらに,スリップ速度についても全くの無知である
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