研究概要 |
物体周り非定常気体流れに供する先進的計測システムを構築し,非定常空力現象解析への適用を図った. まず,申請者が開発を続けている超高速応答型感圧塗料(PSP)計測法をさらに高度化し,5 kHz, 100 Pa (大気圧に対して0.1%) 以下の変動をとらえる方法を検討した.PSP出力の時系列データをFFT解析することにより,100 Paをはるかに下回る変動圧力の抽出に成功した. 次に,超高速応答型感圧塗料(PSP)計測法をさらに高度化することを目指して,新たな感圧塗料用色素の評価,および,周波数応答に対する色素発光寿命の影響の評価を行った.その結果,新たな感圧塗料色素の候補である希土類(テルビウム)色素[Tb(TFA)_3]phenの発光は温度の影響を受けにくいことを明らかにした.また,色素発光寿命と皮膜への酸素拡散特性をカップルさせた理論式を導出し,色素の発光寿命, ガス拡散によるPSP 出力の変化は, ボード線図上では, それぞれの影響の重ね合わせとして表されることや色素の発光寿命が顕著な影響を与えるケースを明らかにした. 最後に,PSPと時系列PIVを共存させる方法を考案し,圧力場と同時に,物体周り速度場についても5 kHzのサンプリングレートで1%の変動をとらえる計測システムを構築した.本システムによる圧力,速度場同時計測法の実証試験として,低速流中に置かれた円柱周りの流れの計測を行った.直径40 mmの円柱を用いて,風速10~40 m/sの範囲における円柱後流の瞬時速度ベクトル場をPIVで,円柱表面の変動圧力を陽極酸化アルミPSPでとらえた.その結果,PIV用オイルシードを風洞に導入し,PIV, PSPの同時計測が可能であること,および,PIVによる渦度,PSPによる変動圧力の相関も良好であることを示した.
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