研究概要 |
本研究では,4名の海外研究協力者:J.Jimenez教授(UPM),A.Pinelli博士(CIEMAT),M.Uhlmann教授(Karlsruhe工科大),L.van Veen博士(Ontario工科大),1名の研究協力者:清水雅樹助教と学生の協力を得て以下の研究計画を実施した. 既に開発済みのニュートン法によるプログラムを用いて,矩形ダクト流における非線形定常進行波解の解析を進めた.平成22年度に求めた正方形ダクトにおける乱流二次流れと同様の8つの渦を有するパターンをもつ定常進行波解を,ダクト断面のアスペクト比を変化させながら追跡した.その結果,レイノルズ数が1200の場合には,8つの渦を有する定常進行波は,2.4より小さいアスペクトに対してのみ存在することが明らかとなった.アスペクト比が大きくなると,定常進行波に見られる渦構造はスパン中央に局在化することが判明した.また,高レイノルズ数域(Re=5480)で正方形ダクト乱流の直接数値シミュレーションを行い,平均二次流れと関連性が示唆されるダクト横断面での大規模循環流を,クレプシュポテンシャルを導入することにより同定し,大小様々なスケールを有する大規模循環流が平均二次流れを生成することを明らかにした.さらに,様々なアスペクト比に対して乱流遷移域での乱流の直接数値シミュレーションを行い,アスペクト比が4を超えると乱れは,乱流パフといわれる流れ方向にのみに局在した状態から,流れ方向だけでなくスパン方向にも局在する,いわゆる乱流斑点の状態に移行することが明らかとなったが,このスパン方向の乱れの局在化は,上述の定常進行波の渦構造の局在化と関連性を有す得るものと考えられる. 以上の理論,シミュレーションに加え,アスペクト比3の矩形ダクトの実験装置を設計製作し,レーザードップラー流速計による流速計測及び可視化の実験を行った.その結果,アスペクト比3の矩形ダクトの乱流遷移がシミュレーションとほぼ同一のレイノルズ数で生じることが確認され,上記シミュレーションの妥当性が検証された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニュートン法による矩形ダクト流の定常進行波解の計算,直接数値シミュレーションによる矩形ダクト乱流の大規模構造の解析,及びレーザー流速計,流れの可視化による矩形ダクト乱流の実験のいずれも順調に進展しており,本研究の目的が達成されていると判断する.
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度は,スパン方向に局在した定常進行波の発見,直接数値シミュレーションによる高レイノルズ数乱流における大規模循環流の同定,及び実験・シミュレーション結果の比較による双方の妥当性の検証が成し遂げられた.これらの成果を踏まえて,平成24年度はニュートン法による定常進行波の計算,乱流の直接数値シミュレーション,及び実験の多面的な方向から矩形ダクト乱流二次流れの解明と制御に取り組む予定である.
|