研究概要 |
液晶に電場を印加すると棒状の分子が回転して,背流と呼ばれる流動が発生する.この流動を利用して超小型モータの開発を目指す.本年度はサイズの異なるプロトタイプを数種類製作し,印加電圧およびその周波数を変化させて,回転数,発生トルクの関係を求めた.また計算結果との比較検討も行った. 1.液晶分子の配向処理 内筒の外表面には通常のラビング処理を施すことで,液晶分子を壁面に対して平行に配向させた.一方,外筒の内表面にラビング処理を施すことは極めて困難であったので,液晶分子を壁面に対して垂直に配向させ,結局,ハイブリッド配向を採用した。 2.モータの設計と製作 モータの内外筒の間隙が5μm~50μm外筒の外径が100μm~800μmのものを製作した.内外筒ともにガラス管を用いた.表面にはスパッタリング装置で電極膜を蒸着した. 3.動特性の評価 印加電圧と周波数を変化させながら,モータの回転数を精密測定した.壁面せん断力の出力値上は極めて小さいので,市販の加重センサやトルク計は使用できず,回転角の時間変化から出力値を算出した.回転角の測定には高速度ビデオカメラを用いた.本実験範囲内では,最大回転数は約30rpmであった.実測データを計算結果と比較検討した結果,両者は満足に一致した. 4.成果発表 日本機械学会年次大会(東京),日本液晶学会討論会(東京),日本流体力学会中四国・九州支部講演会(福岡),ASME-JSME-KSME Joint Fluids Engineering Conference(浜松)で成果発表を行った.また論文執筆と特許出願も行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り進んでいる.特に外筒内壁の分子配向処理であるが,通常のラビング処理が困難な場合,液晶分子を垂直に配向させるハイブリッド配向に切り替えることを申請時に予想していた.事実,その通りとなり,本研究の中で最も困難な点をクリアーできた.
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今後の研究の推進方策 |
H22年度,23年度の2年間で,実験,数値計算,ともに順調に進んでおり,研究計画の変更はない.本年度は研究期間の最終年度であり,液晶アクチュエータのエネルギー効率に関する追加実験を遂行しながら,特許出願,国内外での口頭発表,および論文執筆等の成果発表を積極的に行う予定である.
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