研究課題/領域番号 |
22360082
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉井 康彦 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90345108)
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研究分担者 |
菱田 公一 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (40156592)
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キーワード | 流体工学 / 生物・生体工学 / マイクロ・ナノデバイス / 細胞・組織 / 循環器・高血圧 |
研究概要 |
高速共焦点マイクロPIVシステムを用いて被写界深度を浅くし、さらに、複数の焦点位置の計測断面数を増やし、細胞表面近傍の速度分布を求める計測法を開発した。500nmの蛍光粒子および20倍、NA=0.75の対物レンズを用いて、被写界深度が3μmと低減でき、細胞表面から5μm間隔で4断面の速度分布の計測が実現できた。 本手法を、幅400μm, 深さ63μm, 長さ20mmのPDMS製マイクロ流路内で培養した低細胞密度の血管内皮細胞近傍の流れ場に適用した。得られた速度分布は、層流の理論解からのずれが生じており、細胞表面のグリコカリックス層の存在による細胞近傍の流れ場へに影響が考えられる。細胞表面に存在する0.2~0.5μm程度の厚さのグリコカリックス層によって細胞近傍の流れ場が変化し,細胞にかかる壁面せん断応力が,グリコカリックス層を考慮せず算出した理論値より減少することが示唆された。 今後,細胞の高さおよび壁面せん断応力を詳細に捉えるためにはグリコカリックス層の厚さを求めることおよびさらなる空間解像度と計測精度の向上を行い,グリコカリックス層による流れへの影響を調べる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高い計測精度と高い空間分解能が両立可能である共焦点マイクロPIVを用いた血管内皮細胞近傍の速度分布計測法を開発し、マイクロ流路内で培養した血管内皮細胞周りの詳細な速度分布を計測が実現できており、当初の計画通り、順調に進んでいる。 血管内皮細胞近傍の速度計測の結果、当初想定していなかった細胞表面に存在する0.2~0.5μm程度の厚さのグリコカリックス層の影響が示唆されるなど、新たな知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、光学系などの改良を行い、さらなる空間解像度と計測精度の向上を目指す。空間解像度の向上のためには、さらなる小さな蛍光粒子の利用が不可欠となるが、ブラウン運動の影響が大きくなることや、蛍光強度の減少などにより、計測精度が大幅に低下することが予想される。そのため、実験装置の改良やPIV処理方法の検討を新たに行い、計測精度と空間分解能の両立を目指す。 さらに、細胞の高さおよび壁面せん断応力を詳細に捉えるためにはグリコカリックス層の厚さの計測法を検討し、グリコカリックス層による流れへの影響を調べる。
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