研究概要 |
生体組織における見かけの熱伝導率が,血流速度の二乗に比例することを,論文"Arigorous derivation of the bioheat equation for local tissue heat transfer based on a volume averaging theory" (Heat and Mass Transfer, Vol.46, 2010, pp.739-746)として公表されたが,これを,確かめるべく実験を行った.被験者の腕を,カフを用いて一定の圧力で締め付けることで,血行を制御した.血流速度を血流レーザードップラーで測ると共に,熱電対およびリアルタイム血流画像化装置を用いて,皮膚表面温度およびPerfusion Unit値の計測を実施した.併せて,我々が導いた生体組織の伝熱の式を用い,数値シミュレーションを実施した結果,シミュレーション結果と計測結果との間に良好な一致を見た.これらにより,実験と理論の両側面から,血行が生体組織の温度場に与える影響を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生体伝熱の定式化を行った.Weinberg-Jijiの式を改良すべく,局所体積平均理論に基づき3次元にも適用できる一般的な式を確立することができた,これを用いたマルチスケールモデリングも上腕部について実施し,実験との良好な一致を得ている.さらに人工肺および人工透析などバイオロジカル・システムの解析にも適用できることが分かった.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終段階として,既に構築した局所体積平均理論に基づくマルチ・スケールモデルを,生体系のみならず,人工肺および人工透析などバイオロジカル・システムへの広範囲の応用を考える,さらに,淡水化など半透膜にかかわる輸送現象にも,本マルチ・スケールモデルが有効であることが判明したことから,広範囲の工学的応用の可能性も探る.これらの種々の応用を通して,本マルチ・スケールモデルの有用性を高めると共に,本研究を総括する.
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