研究課題/領域番号 |
22360096
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
藪野 浩司 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (60241791)
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研究分担者 |
黒田 雅治 産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (60344222)
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キーワード | 原子間力顕微鏡 / カンチレバープローブ / 自励振動 / 光てこ / 非線形フィードバック / 液中観察 / 生体試料観察 / 非接触観察 |
研究概要 |
前年度において理論的に提案された、非線形フィードバックを用いたマイクロカンチレバープローブの振幅制御法を実用化するため、その非線形特性に関する理論解析と実験を行った。カンチレバープローブを自励発振させるために、光てこ装置によって測定されるカンチレバーのたわみ角の正帰還フィードバックを行い、さらに非接触計測実現のため、非線形フィードバックを適用して、自励発振振幅の低減化を図るという手法を理論的に提案し、線形フィードバックゲインと非線形フィードバックゲインの大きさをパラメータとして分岐解析を行い、その特性を理論的に調べた。その結果を用いて、本制御系の実機実験装置への実装を試みた。理論と同等の自励発振を実現し、理論に沿った非線形フィードバックを実行するため、積分回路の特性が理想に近い値(1/4周期遅れた値)を出力するような回路を開発した。また安定な非線形フィードバックをおこない低振幅定常自励発振を実現するためには、カンチレバーが微少振動している状態で、変位信号が雑音レベルよりも十分に大きくなる必要があり、雑音除去とともに観測信号が雑音に埋もれずに強い変位信号を発生できる光てこアンプ回路が必要であるため、これを設計製作した。理論的にはカンチレバーの定常応答振幅を無限小にできることが確認されたが、実際にはそれは不可能であり、実装回路を理論に即した理想的なものにどれだけ近づけられるかが大きな課題であった。上記のような回路が完成したことにより、オングストローム程度の振幅を維持して自励発振するマイクロカンチレバーの実現へ大きな一歩を踏み出したことになる。またこれにより、液中生体試料の完全非接触計測が容易になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
回路設計をおこなうにあたり、予想以上に実験を繰り返す必要があったため、回路の完成が遅れ、それに伴って、実験開始が予定よりも遅くなった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度完成した非線形フィードバック用の回路を原子間力顕微鏡装置に実装して、オングストローム以下の振幅を持つ低振幅定常自励発振マイクロカンチレバーを実現する。さらに本回路で市販AFM装置の制御部分を置きかえることにより、低振幅定常自励発振カンチレバープローブを用いた非接触液中画像観察を試みるとおもに非接触状態での生体試料観察を可能にする。
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