研究概要 |
本研究のキーテクノロジーである閉ループ弾性体の飛び移り座屈を利用した瞬発力発生機構を中心として,動物に匹敵する俊敏性を有する小型ロボットの開発を行った. 水中を移動する小型移動ロボットに関しては,V字型の閉ループ弾性体の両端を捩ることにより大きな扇ぎ動作を実現する新たな瞬発力発生機構を開発し,この機構に基づいて,全長およそ300[mm]に対して厚さわずか13[mm]という非常に薄型のキック遊泳ロボットを製作した.この遊泳ロボットは,流体抵抗の少ないボディで水を強く蹴ることができるため,短時間で最大秒速2.18体長(0.74[m/s])に達する急推進に加え,最大角速度289[rad/s]に達する急旋回の能力も併せ持つ.停止状態から一蹴りで様々な方向に進むことができる俊敏性を有する遊泳ロボットの開発に成功した. また,これとは別に,V字型弾性体の両端の位置関係を変化させることによって飛び移り座屈を得る新しい瞬発力発生機構を開発し,この機構に基づく遊泳ロボットの設計パラメータと俊敏性との関係を明らかにした. 一方,連続体ロボティクスの理論に関しては,閉ループ弾性体の新しい形状遷移モデルを導出し,瞬発力を得る際の特徴的な現象である飛び移り座屈を定式化することに成功した. 本年度は,閉ループ弾性体の飛び移り座屈を利用した瞬発力発生機構以外の機構ついても検討を行った. 飛翔ロボットに関しては,シングルロータのスイッチングにより,方向転換が可能となる現象を見出し,小型で簡素な機構でありながら,十分な移動能力を有する飛翔ロボットのアイデアを得た. さらに,俊敏性を有する小型移動体のみならず,ロボットマニピュレータへも研究が進展した.わずか4分の1秒の間に約1[m]離れた場所にある物体を素早く捕獲できる新しいカメレオン型のシューティング・マニピュレータの開発に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
陸上を移動する走行ロボットおよび水中を移動する遊泳ロボットに関しては,既に高性能のロボットの開発に成功し,それらの一部に対しては研究発表を行い,高い評価を得ている.空中を移動するロボットに関しては,まだ発展の余地があるが,新たなロボットのアイデアに繋がる現象は既に見出しており,今年度の研究で成果が得られる可能性がある.この他に,当初予定していなかったカメレオン型のシューティングマニピュレータの開発に成功しており,俊敏性を有する連続体ロポティクスの研究を,移動体のみならずロボットマニピュレータに対しても広げることができている.以上のことから,当初の計画以上に研究が進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
閉ループ弾性体の飛び移り座屈を利用した瞬発力発生機構に限定せず,広く連続体の力学的機能を模索し,ロボットの俊敏性を追求すると共に,連続体ロボットの理論構築を進めていく.また,最終年度は,社会との繋がりや有用性の方向に研究をシフトしていく.具体的には,研究成果を技術シーズとして広く公開することに加えて,国内外の研究者との交流を広げることにより広く情報を集め,有用性についての議論を積極的に行っていく.
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