本研究の目的は、生物の色素細胞の作動原理から着想を得たモータータンパク質で駆動する光学デバイスを創製することである。色素細胞では繊維状タンパク質がネットワークを構成しており、モータータンパク質により色素がネットワークに沿って運搬され色変化を作り出している。これまで研究代表者はこの分子システムを生体外に再構築した光学素子の再構築に成功させてきた。しかしこの系は複雑で再構成プロセスも煩雑で再現性・発展性に問題があった。そこで本研究では色素の凝集・分散をより単純な原理で実現し、素子の制御機構を含めた光学システムの応用展開を図る。本研究ではモータータンパク質のデンドリマーによる微小管の自己凝集を利用し色素の「凝集」⇔「分散」の色変化をマイクロチャンバ内に構築する。 本年度は、モータータンパク質のデンドリマー形成を光照射により制御可能にするため2通りの手法を開発した。1)キネシンm13/CaMCFP複合体 (不可逆制御): C末端にCaM結合配列(m13)を持った変異キネシンと4量体蛍光タンパク質CFPにCaMを融合させたCaMCFPを作成した。Caイオン有無下で混合物の分子量を測定したところ、Ca存在下ではキネシンとCFPは結合し1分子に4つのキネシンを持ったデンドリマーを形成させることができた。cagedCaでデンドリマー形成の光制御が可能となる(平塚)。2)LovJam13/CaM複合体(可逆制御):光応答タンパク質LovJaにm13を連結したLovJam13を作成した。連結部位の配列の微調整により光によりLovJa-m13に対するCaMの親和力を変化させることに成功した。これは先の系のcagedCaに代わるスイッチ分子として機能させることができる(平塚)。マイクロチャンバ内での微小管の自己集積をブラウン動力学法を用いてシミュレーションにより可視的に予想可能にした(新田)。
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