研究概要 |
<実施事項(1)乳房の熱物性値の取得とそのモデル> 生きたヤギを用い,乳房をラジオ波焼灼療法にて焼灼することで,乳房の熱物性を取得した.また,次年度実施予定の乳房内部の血流量測定を行う前段階として,肝臓に対する血流量測定実験を実施し,血流量と熱物性の相関性を取得した. <実施事項(2)高精度温度分布シミュレータの開発 昨年度より解析時の操作性を向上させるため,GUIを用いて,直観的に解析条件を入力できるようなシステムに改良し,乳房のように複雑な形状を持つ物体のモデル化に優れる有限要素法を用いて,プログラムを実装した.シミュレータを開発後,最終的に開発したシミュレータの精度評価を行うため,RFA装置(Radionics社Cool-tip RF System)を用いて摘出したブタ肝臓に対する焼灼実験を実施し,肝臓の温度についてシミュレーション値と実測値の比較を行った.シミュレーションでは,70×70×15mmの3次元ブタ肝臓モデルを構築し,モデル上辺より中央まで穿刺したRFA針先端20mmに30Vを印加した際の温度分布の時間的変化を算出した.一方,肝臓モデルと同様の寸法に切り出した実際の摘出ブタ肝臓を用意し,36℃に一定保持した温水を肝臓の周囲に還流させることで体内の環境を再現した.焼灼中,RFA針先端から水平にとった4点a~dの組織の温度を熱電対温度計により実測した.実験の結果4点a~dの実測値と解析値の温度上昇傾向は高い精度で一致しており,シミュレーションによる温度の予測が高精度に実現可能であることが示された.結果として,温度が一定となる定常期において,実測値とシミュレーション値の最大差は3.2℃であり,シミュレータが高い精度を有することを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,本申請にて目標とするシステムの内、核となる技術である術中に治療の進行状況を推定する高精度温度分布シミュレータの開発が完了し,計画通り,最終年度である来年度に術前プランニングと術中ナビゲーション情報に基づき実際に治療を行う焼灼ロボットを開発することが可能である.本年度,上記ロボットの開発も一部進めることができており,進捗としてはおおむね順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方針には,当初計画より概ね変更はない.最終年度にあたる来年度には術前に計画された焼灼プロセス,および術中の実際の温度分布情報に基づき,電極針の穿刺位置および熱量の双方を調整することで,自動的に最適な焼灼形状を形成する焼灼ロボットを開発する.具体的には,これまで開発してきた穿刺ロボットにをベースに,熱量制御機構を付加することで,穿刺と焼灼の双方に特化したロボットを開発する.熱量制御機構の開発にあたっては,従来のRFA装置では不可能であった患部の冷却を行えるシステムを考案する.具体賄的には,従来のRFA装置が有する高周波電流による加熱機構に加え,ペルチェ効果に基づいた冷却機構を電極針に内蔵することで,患部の加熱と冷却の双方を実現し,患部全域を等温で加熱するシステムを開発する.
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