研究概要 |
本研究は無痛採血および血液検査の完全自動化を目指した蚊ロボットの実現の要素技術として,蚊の針のようにしなやかで柔軟な素材の多重複合針の開発を目的としている。具体的には微細で柔軟な針の複数の部材に研磨等の加工を行うため,加工部に充填した溶媒を凍結して柔軟な針部材を固定化し,凍結溶媒と共に先端を研磨することで高精度な針先を製作できる極低温凍結チャックシステムの開発を行う。 本年度はまず極低温冷凍チャック開発の基礎実験としてペルチェ素子を用いた冷凍チャックシステムの製作を行い,部材のチャック方法,部材のチャック強度,冷凍機の断熱方法等の基礎的検討を行った。製作した冷凍チャックの冷却部は円筒形にくり抜かれたアルミブロック形状で,その周囲を熱伝達率0.17~0.19W/mKのポリプロピレン樹脂のブロックで覆った。円筒形の冷却部内には加工部材を固定するV字型ガイドを有し,凍結溶媒を充填後,凍結固定した。部材加工の際は溶媒と一体化した円柱形部材を冷凍ブロックからせり出し,溶媒ごと電動ルータにて研磨加工を行った。本冷凍チャックは円筒冷却部を回転させることで針先端の円錐加工を可能としている。 凍結した溶媒の剪断負荷試験を行った結果,固定温度-5℃のとき,48Nの負荷(剪断応力0.95MPa)に耐えることが確認された。また整備備品のスターリングクーラー式冷凍機(冷却能力:173K)に温度制御回路,電源を取り付け,動作確認を行った。 次年度はスターリングクーラー式冷凍機を用いた極低温冷凍チャックにより加工試験を行うと共に,血管穿刺制御のための針部材への電極形成方法の検討を行う予定である。
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