研究概要 |
本研究課題の目標は、コモンモードノイズを取り扱うための物理を加味した等価モデルを構築し、開発の初期段階で効率的に複合システムにおけるEMI低減設計を実施できる環境を実現することである。 平成22年度は上記目標に対して研究を遂行し、以下の成果を得た。 1、物理を加味した等価モデル構築 これまでの1次元伝送線路を対象とした平衡度不整合モデルの拡張として、実電圧・電流の直交モード分解法に基づいてモード変換を表す等価電源モデルを導出し、これを含むモード等価回路の構築を試みた。提案モデルの有効性検証のため,送受信器が平行ケーブルで接続された3導体系からなる伝送システムに適用し,実験結果とよく一致することを確かめた。 2次以上の多重極表現に関する検討では、実質的な共同研究者であるHeino Garbe教授とともに理論的な可能性を議論した。具体的なモデル数種類を候補に挙げて数値モデルの規模に関する検討を行ったが、実験的検証には候補が多すぎ、現状では実現がかなり困難であることが判明した。 2.測定によるコモンモードノイズの定量評価 1次元伝送線路を対象としたコモンモード電流測定では、接地条件に依存するが、モデルとよく一致する測定結果を得ることに成功している。電流プローブを含む測定環境が測定結果に与える影響をより小さくするための検討は、今後も引き続き行う必要がある。 3.3次元電磁界シミュレータを用いた検証 簡略化したテスト構造体(規範問題)を対象とした放射電界測定の誤差評価を行うため、電磁界シミュレータによる解析結果と測定による実測結果の比較を行った。その結果、横方向と高さ方向に位置をずらした4点で観測した放射電界スペクトルの包絡線を比較することで、誤差6dB程度以下で測定とシミュレーションの一致することを確認した。 ベイズ理論に基づいて測定から波源推定するモデルの作成準備を先行して行う予定であったが、22年度は至らなかった。
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