研究概要 |
平成23年度に実施した研究の成果は以下のとおりである。 まず,昨年度構築したモード変換励振源を含むモード等価回路モデルについて,2本の線路とシステムグラウンドからなる3導体伝送系から導体が1本増えた4導体伝送系への拡張を試み,これに成功した。これは,検討している等価モデルが多導体伝送系に対しても適用可能,すなわち一般化できることを示している。これより,目標であった電磁気学と電気回路・伝送線路両理論の間を埋める新たなモデルが構築できたと考えている。電磁界の状態を表すパラメータとして,伝送線路理論で用いられる特性インピーダンスに加えて電流配分率を考慮することで,回路モデルによりモード変換まで表現可能となった。今後は,このモデルを利用したEMI低減設計法を確立するための具体例の検討段階に入る。 次に,より一般的に適用可能な構造,製品を視野に入れた検討を2つの対象について行った。まず車両を想定した近接導体とハーネスからなるテスト構造体では,放射測定において最大値保持による多点測定で測定の精度や再現性向上が実現可能との結論を得た。3次元電磁界シミュレーションによりこの結果の検証を行うとともに,不要電界放射を表現する簡易モデルを検討した。この簡易モデルでは近接グラウンドを流れるコモンモード電流の効果がまだ考慮できていないため,これは今後の課題である。 また,金属ネジで筐体に回路基板を固定する場合を対象とした検討では,接続後に生じる共振モードを特定した。これより,接続によって生じる共振を,構造から接続前に見積もることができる。共振時に不要放射は増加するため,共振抑制法の確立に向けてのモデル化を含む準備ができたと考えている。 最後に,EMIシミュレータへの実装について,順次できる所から進める方針で,構築した等価モデルの一部をプログラムとして具体化した。
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今後の研究の推進方策 |
24年度が最終年度のため,検討した内容が系統的にまとめられるよう進める。モデル化が完全に完了していない部分はこれまでの知見を基にモデル化の詰めの作業を早急に行う。モデル構築が完了した部分はEMI低減設計に向けて,一般的な適用を目指した2つの対象について,これまでに引き続き測定やシミュレーションによる検討を行う。一点,EMIシミュレータの新バージョンの作成では,解析対象によりモデルの形態が異なり,すべてを一つにまとめるのは難しいと判断したので,可能なものをEMIシミュレータに順次盛り込む方針で進める。
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