研究課題/領域番号 |
22360117
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
船木 和夫 九州大学, 超伝導システム科学研究センター, 教授 (60091352)
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研究分担者 |
柁川 一弘 九州大学, 超伝導システム科学研究センター, 准教授 (10294894)
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キーワード | 高温超伝導 / 伝導冷却 / コイル設計 / 低損失化 |
研究概要 |
1)短尺Bi-2223テープの外部磁界損失(平行磁界損失と垂直磁界損失)、および、この線材と同等の線材を用いた2種類のダブルパンケーキコイル(8個ダブルパンケーキと16個ダブルパンケーキ)の通電損失を液体ヘリウム中で測定した。また、短尺線の損失測定結果を用いてコイルの各部の磁界(大きさと方向)を考慮した局部損失を予測し、これらを巻線全体で積算する解析プログラムを作成し、コイルの通電損失の測定結果と局所外部磁界損失積算の解析結果を比較.検討した。その結果,短尺試料の外部磁界損失を用いたコイルの全損失の解析結果と実測値との比較において,特に電流振幅が比較的小さい領域で一致度が低くなる結果を得た。このことは,テープ形状の巻線に対して垂直方向の磁界成分に対する形状効果(反磁界効果)の影響が大きいことを示唆していることから,6層積層の短尺線の測定結果から,パンケーキコイルの巻数96に相当する積層時の損失に換算する方法を用いて,コイルの全損失の全損失の解析法を改良した。その結果,電流振幅が比較的小さい領域での実測値と解析値の一致度が改善されることがわかった。 2)商用周波数までの領域で利用できる低損失なBi-2223線材の候補として、これまでに研究グループ(九州大学、住友電工)において、中央部に絶縁層を持つBi-2223多芯テープを提案している。その特性評価のために製作された試作線について、77K、0.25Tまでの磁界振幅、60Hzまでの周波数領域において垂直磁界損失を測定し、従来型のBi-2223多芯テープと比較検討している。本研究課題において、双方について、周波数が大きくなると主要な損失成分となる結合損失を定量化できる理論解析法を明らかにすると共に、従来型と比較して結合損失を大幅に低減できることを示した。今回の試作線はその電流容量が従来型と程度なる新たな試作線について,同様に結合損失の低減効果についても,実験的に確認した。さらに,低減効果の解析モデルを考案して,その効果の定量的な評価を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)コイル巻線のBi系短尺試料の交流損失の印加磁界方向による異方性の測定結果を用いて,コイルに交流電流を通電したときの交流損失(通電損失)を解析により予測し,実測結果と比較して,特に,小電流振幅領域でよい一致をみた。大電流振幅領域における損失が解析結果を多少上回る結果については,さらに考察を行う。 2)中央部に絶縁層を配置することによりBi系テープ線の結合損失の低減できることを,種々の構造の試作線の損失測定により実証した。その低減効果を説明できる解析モデルを検討する段階になっている。 3)異常横磁界効果を利用して,超伝導テープ線における遮蔽電流や交流損失を低減する方法を新たに提案した。
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今後の研究の推進方策 |
1)今年度までに行っているBi系コイルの通電損失に対して,特に,大電流振幅領域において問題となる外部磁界と通電電流の共存による交流損失の増大効果について定量的な考察を行う。 2)中央部に絶縁層を配置したBi系テープ線の結合損失の低減効果を解析して,効果的に損失低減ができる線材構成について考察する。 3)本年度作成した低損失タイプのBi系テープ線によるコイルの通電損失を液体窒素中で測定する。使用した線材は,前項の線材と同様に,ヒステリシス損失と結合損失が共存するため,その双方の損失を考慮した解析により,コイルの通電損失の定量的評価が可能となる手法を検討する。
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