研究課題/領域番号 |
22360121
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
清水 敏久 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (30254155)
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研究分担者 |
和田 圭二 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (00326018)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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キーワード | ロスマップ / 鉄損 / ヒステリシス損失 / 渦電流損失 / TDR / 寄生インダクタンス / 寄生キャパシタンス / パワーエレクトロニクス |
研究実績の概要 |
初年度の研究成果を踏まえ,インダクタの瞬時鉄損を正確に記述するロスマップ法を用いて単相PWMインバータに使用するACフィルタインダクタの鉄損計算手法の開発と実機検証を行った。TDR法を応用してパワーデバイス寄生キャパシタンス計測法を開発した。 (1)ロスマップ法を用いた単相PWMインバータのACフィルタインダクタの鉄損評価 ロスマップに基づく鉄損計算値手法と実際のインバータに同期して鉄損を計測するインダクタロスアナライザ(ILA)を活用して単相PWMインバータのACフィルタインダクタの鉄損評価を行った。ロスマップによる鉄損の計算結果とILAによる実測値との差異について検証を行った。始めに,ILAによる鉄損計測の精度検証として,高精度高周波電力計(Newtons 4th社 PPA5530)との鉄損計測値の差異を検証し,両者の計測結果の差異は2%程度以下であり,ILAの計測精度は十分に高いことを確認した。次に,ロスマップ法とILA法との差異の大きな場合について,誤差要因を調査した結果,使用する回路シミュレータで計算した磁束密度の計算誤差がその原因であることを突き止めた。そこで,磁束密度の計算誤差を補正した値を用いてロスマップ法による鉄損を計算したところ,ILA法による測定値との差異は3%程度以下となり,ロスマップ法の計算精度が検証された。磁束密度の計算誤差要因については今後の課題として研究を継続する。 (2)TDRを用いたパワーデバイスの寄生キャパシタンス計測法 昨年度開発したTDR法を応用して,パワーデバイスの寄生キャパシタンスの高精度計測法の開発を行った。パワーデバイスの端子電圧によって大きく変化する寄生キャパシタンスを正確に計測出来るように,TDR装置に直流バイアス電圧を印加できる方式を開発した。これにより,広い電圧範囲でキャパシタンスを正確に計測出来ることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)ロスマップ法を用いた単相PWMインバータのACフィルタインダクタの鉄損評価 実際のインバータに同期して鉄損を計測するインダクタロスアナライザ(ILA)を活用することにより,従来のロスマップ法の計算精度の検証が行えたことは本研究を進めする上で非常に有益であった。これにより,ロスマップ法とILA法との間に大きな差異が発生する場合があることの発見に繋がった。さらに,磁束密度の計算誤差を補正した値を用いてロスマップ法による鉄損を計算したところ,ILA法による測定値との差異は,3%程度以下となったことは大きな成果である。なお,磁束密度の計算誤差要因については今後の課題として研究を継続する必要がある。 (2)TDRを用いたパワーデバイスの寄生キャパシタンス計測法 TDR法を応用して,パワーデバイスの寄生キャパシタンスの高精度計測法の開発を行った。パワーデバイスの端子電圧によって大きく変化する寄生キャパシタンスを正確に計測出来るようにするために,TDR装置に直流バイアス電圧を印加できる方式を開発した。これにより,広い電圧範囲でキャパシタンスを正確に計測出来ることを実証した。このように,従来は通信回路で使用されていたTDR法をパワーエレクトロニクス回路の分析に使用できるようにできた意義は大きいと考える。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ロスマップ法の更なる応用展開による受動部品の低損失化 単相PWMインバータにおけろインダクタ鉄損の高精度計算法が確立できたので,これを三相PWMインバータを始めとするその他の変換回路での鉄損計算法の開発に展開する。また,インダクタの鉄損に加えて銅損も同時計測出来る方法を開発し,インダクタ全体の損失分析技術の開発に繋げる。さらに,それらを応用して,インダクタの損失と外形寸法を最適化する設計手法の開発を行う。 (2)TDR法による寄生パラメータ計測を応用した高精度設計技術の開発 パワーエレクトロニクス回路に使用する電子部品の寄生パラメータの抽出技術を応用して,主回路配線基板の寄生要素の分離計測技術に展開する。さらに,分離抽出した寄生パラメータを用いた回路シミュレーションにより,実際の装置の回路動作を高精度で模擬できることを実証する。
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