研究概要 |
H23年度の研究においては,非晶質-結晶化転移を利用してDyレス高保磁力等方性磁石粉末を開発することを目標に,計算機シミュレーションと薄膜コーティング技術を融合利用して研究を進めた。まず,極微細Nd-Fe-B結晶から構成される磁石を仮定し,結晶表面の異方性低下と保磁力の関係について,マイクロマグネティクス理論に基づいた計算機シミュレーションを行い,結晶表面の磁気異方性の回復が極微細結晶磁石の保磁力を著しく増加させることを明らかにした。 この成果を基に,超急冷法により得られた非晶質Nd-Fe-Bフレークの片面にPLD法によりDyコーティングを施し,極短時間熱処理によりフレークの結晶化とDyのNd-Fe-B結晶表面付近への拡散を同時に行い,結晶粒の肥大化を抑制しつつ,残留磁化を損なうことなく高保磁力を達成することを試みた。この結果,熱処理温度650℃,保持時間0分の熱処理により,高保磁力のNd-Fe-Bフレーク磁石を得ることができた。開発磁粉保磁力は,Dyコーティングを施さずに結晶化したフレークに比べて,約500kA/m高く,残留磁化はコーティングなしのもととほぼ同じであった。SEMおよびTEMによる微細組織と組成の分析により,極短時間の熱処理により,Dyがフレークの内部に拡散し,Nd-Fe-B結晶の粒界に偏在していることを確認した。 非晶質Nd-Fe-Bフレークにおいて高保磁力を達成できたので,フレークを粉砕して得た非晶質磁粉の表面に,蒸着法によりDyをコーティングし,フレークと同様な効果が得られることを確認した。1.6wt.%のDyをコーティングした際に,約500kA/mの保磁力増加が観測された。
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