研究概要 |
H23年度の研究成果は以下のように要約される。 1.Nd_2Fe_<14>B粒界近傍の結晶磁気異方性回復と保磁力の関係,Nd_2Fe_<14>B結晶と粒界相との交換相互作用の保磁力に及ぼす影響について,マイクロマグネティクス理論に基づいた計算機シミュレーションを行った。この結果,Nd_2Fe_<14>B結晶表面へのDy拡散による磁気異方性回復は,異方性磁石において特に顕著に保磁力を改善することが見出された。さらに,強磁性粒界相が存在する場合の保磁力についても解析した結果,強磁性粒界相の厚さが数nm程度で,Nd_2Fe_<14>B主相と反強磁性的に結合する場合には,Nd_2Fe_<14>B結晶表面での磁気異方性劣化を補償し,保磁力を増加させる場合があることが明らかになった。 2.平成22年度のNd-Fe-Bフレークに対する研究結果を展開し,非晶質Nd-Fe-B磁粉にDyコーティングを作製する技術を開発し,Dyコーティング非晶質Nd-Fe-B磁粉の結晶化を利用して,Dyを磁粉内部の粒界に拡散させ,残留磁化の低下を抑制しつつ,等方性Nd-Fe-B磁粉の保磁力を増加させることに成功した。保磁力はDyコーティング量に比例して増加した。磁粉間および1つの磁粉表面でのDyコーティング厚にはムラが存在したが,Dyコーティング量と保磁力の増加量の関係は,平成22年度に得たNd-Fe-Bフレークに対する結果とほぼ同じであった。このことは,今後,コーティング厚の均一化が達成.されれば,更なる保磁力改善が期待されることを示唆している。 3.異方性Nd-Fe-B磁石で保磁力増加に効果があると報告されているNd-Cu,DyFコーティングについても,非晶質からの結晶化を利用する手法を適用して保磁力を増加できることを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に実施予定の圧縮体での保磁力改善効果を確認することができなかったが,代わりにNd-Cu等の効果を確認できた。このことより,圧縮体での保磁力改善が容易になると予測され,平成24年度に圧縮体での保磁力改善の目処がついた。このことより,(2)と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画では,平成24年度に,異方性磁石の作製のための新規設備を導入する予定であった。しかしながら,研究費の面で導入が困難な状況にある。これを解決するために,本研究の研究協力者で,塑性変形による異方性磁石の作製に実績があり,そのための設備を有するS.P.Narayan氏(Advanced Materials & Processes Research Institute,India)との協力体制で研究を遂行することにした。
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