研究課題/領域番号 |
22360129
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中野 正基 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (20274623)
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研究分担者 |
福永 博俊 長崎大学, 工学研究科, 教授 (10136533)
板倉 賢 九州大学, 総合理工学研究科, 准教授 (20203078)
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キーワード | 厚膜磁石 / PLD法 / 等方性磁石膜 / 保磁力 / 添加物 / 高トルク小型モータ / 高成膜速度 / 多極着磁 |
研究概要 |
優れた磁気特性を有する等方性Nd-Fe-B系厚膜磁石の開発において、昨年度構築した成膜装置を用い、昨年度内に検討したr「Cu元素の添加」は「残留磁化を損なうことなく100kA/m程度の保磁力向上には有効である」一方、「減磁曲線の角型性の劣化」を引き起こし、ひいては「小型モータへの応用材料として改善が必要であることが明らかとなった」その結果を踏まえ、当該年度は、「極短時間熱処理」や「マスクターゲットを利用したNb元素の微量添加」等を行い、「結晶粒径の微細化を利用した結晶粒間の交換相互作用を起源とする残留磁化増大効果」を用い、200kA/m以上め保磁力の向上と共に、良好な角型性を有するループの実現により0.8T以上の残留磁化も実現できる事が明らかとなった。更に、応用を鑑みた「10μm厚超薄手基板上への80μm厚以上の試料の堆積」も実現できる事を確認した。以下に得られた知見を整理し述べる。 (1)Nb添加によるNd-Fe-B系厚膜磁石の磁気特性向上 残留磁化を損なわない範囲におけるNb添加を等方性厚膜磁石に対し2種類の手法で施した。第一の手法は「Nb添加を施したNd-Fe-Bターゲットの利用」であり、第二手法は「Nbマスクを施したNd-Fe-Bターゲットの利用」である。特にNbマスクを施す手法はNd-Fe-B結晶粒の周回にNbを有効的に偏析させる目的を持って検討した結果、残留磁化0.81T、保磁力390kA/m程度の角型性に優れた試料を実現した。 (2)超薄手基板に対するNd-Fe-B系厚膜磁石の堆積 本厚膜試料の小型モータへの応用に際し、非磁性相基板とNd-Fe-B系厚膜磁石の厚みの比は重要となる。磁界解析より高トルクが見積もられている「10μm厚基板上への80μm厚以上の厚膜磁石の堆積」を実現した。 (3)電子顕微鏡を用いたNd-Fe-B系厚膜磁石の微細構造観察 上記のNb添加を施した試料において、「Nbの偏析の様子」や「粒界層での存在頻度」を電子顕微鏡による微細構造観察を通じ確認し、その微細化のメカニズムを明らかにした。 (4)マイクロマグネティクス理論を用いた磁気特性解析 (1)平均結晶粒径や(2)粒界層における交換結合力をパラメータとして磁気特性の計算機解析を比較検討し、保磁力向上のメカニズムを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成22年度:「成膜装置の構築」・「Cu元素を用いた保磁力向上の実現」ならびに平成23年度:「微量Nb元素添加による保磁力・残留磁化・角型性の向上」を各々実現してきた。加えて、23年度には「実機応用を視野に入れた10μm厚基板上への80μm厚以上の厚膜磁石の堆積」を実現した。以上2年間において、「装置の構築」⇒「磁気特性の向上」⇒「本厚膜磁石の小型モータへの応用への道筋」といった結果を踏まえ、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後2年間において、PLD(Pulsed Laser Deposition)法の特徴を活かした磁気特性の向上を新たに導入し、その後、これまで得た「添加元素の知見」との相乗効果を検討する。今年度は新しい残留磁化の向上手段として、昨年度の後半に検討を開始した「高エネルギー密度のレーザの利用」による高残留磁化の等方性ナノコンポジット厚膜磁石の作製を検討する。具体的には、ターゲットを照射するレーザのスポット径を制御し、成膜直後の試料における組成の揺らぎを利用した結晶粒径の微細化、ひいては磁気特性の向上を推進する。加えて、「微細構造観察」・「計算機による磁気特性解析」を通じ、学術的知見も同時に得ることを目的とする。
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