研究概要 |
本研究では、従来詳しい研究が行われていなかった強誘電体一次元ナノ構造(ナノロッド、ナノワイヤ、ナノチューブ)を独自の技術により作製しその物性を調べることを研究目的としている。 当該年度は、まず高品質の強誘電体一次元ナノ構造の作製技術の確立を図った。本研究では、まずMOCVD(有機金属気相成長)法によりZnOナノロッドを基板上に成長させ、それを凸型テンプレートとして、その上にやはり被覆性の良いMOCVD法によりPbTiO_3(PTO)やPZT(Pb(Zr, Ti)O_3)を堆積させ、一次元ナノロッドを作製する。この方法ではアスペクト比50以上のナノロッドが作製できる。ZnOナノロッドの長さや直径、アスペクト比は成長時間、基板温度、反応圧力により制御することができた。PTOやPZTのアスペクト比はZnOの成長時間や基板温度の増加に伴い増す事が分かった。 堆積されたPTOやPZTはX線回折法やEDX分析、電子線回折等の観察からは間違いなく結晶化しており、TEMの断面観察からはPTO/ZnO及びPZT/ZnOコアシェルヘテロナノ構造が形成されていることが確認された。 サファイア基板上に作製されたPTOナノロッドをX線回折法により詳しく調べた結果、PTOのc軸、つまり分極軸はZnOナノロッドの側面から長軸方向に27°もしくは69°傾いていることが明らかになった。 上記方法で作製したPTO/ZnO及びPZT/ZnOを酸性溶液中で処理し、ZnOのみを選択エッチすることでナノチューブの作製に成功した。PTOナノチューブは薄膜に比べて大きな電界誘起歪み(約1%)を示したが、単純なモデル化によりその起源を考察した。 またナノロッド型キャパシタへの応用を目指し、VSL(Vapor-Liquid-Solid)成長法による選択成長の試みも行った。
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