研究課題/領域番号 |
22360132
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
羽賀 浩一 仙台高等専門学校, 地域イノベーションセンター, 教授 (30270200)
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研究分担者 |
宍戸 統悦 東北大学, 金属材料研究所, 研究推進研究員 (50125580)
湯葢 邦夫 東北大学, 金属材料研究所・金属ガラス総合研究センター, 准教授 (00302208)
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キーワード | 酸化亜鉛 / 透明トランジスタ / MO-CVD / 結晶配向性制御 / ベータージケトン系金属錯体 / レーザー直接描画法 |
研究概要 |
本年度当初は、昇華・再結晶化装置の昇華圧力(V.P.)を800hPa一定とし、昇華温度(V.T.)を170-190℃まで変化させたファイバー試料のMO-CVDと同一な減圧条件による熱分析(DTA)の測定を進めた。全ての試料において60-90℃と130℃付近に大きな吸熱ピークが確認できた。60-90℃に出現する広範囲な吸熱ピークはZn(C_5H_7O_2)_2に水和物として結合している水和水の蒸発に起因する。市販のZn(C_5H_7O_2)_2粉末では単一の吸熱ピークである1水和水であることが多いが、V.T.が170-175℃では2つの吸熱ピークが確認でき、結合水和水が多い原料と想定される。130℃付近の吸熱は原料の溶融による吸熱であり、試料の組成が異なる場合にこのピーク位置が移動する。V.T=170℃の試料ではピーク位置が高温側へと移動しており、これは水和水の結合状態と密接な関係があるものと考えられ、FT-IRの測定結果と比較しながら検討を進めている。V.T=190℃の試料では溶融による吸熱ピーク高さが減少し、さらにピークの広がりも確認でき、昇華温度の増加により再結晶化されたファイバーの構造が変化した可能性が高い。これらの試料を用いて作製したZnO薄膜の抵抗率は顕著な変化を示し、V.T.が170-175℃の試料では10^1-10^2(Ω.cm)の低抵抗となり、それ以外の試料では10^9(Ω.cm)と極めて高抵抗の値を示した。 本年度後半には、この高抵抗ZnO薄膜を活性層としてZnO-TFTを試作した。本年度はZnO-TFTの再現性を向上させるために、従来から行っていた複数マスクによるデバイス試作を行わず、フォトリソプロセスを実施し、露光法としてレーザー直接描画法を採用した。この結果、デバイス特性は十分ではないものの、微細化したZnO-TFTが得られ、その再現性は大幅に向上した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
遅れの最大の理由は3月11日に東北地方を襲った大震災の影響に他ならない。震災後4ヶ月間は学内施設の復旧に明け暮れ、その後、震災で破損した実験装置、分析装置の修理に追われた。その結果、実質的な研究は4ヶ月程度しか実施できず、当然ながら当初計画は大幅に遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
この大幅な遅れを取り戻すことは困難なため、昨年度特別に許可された基盤Bの重複申請を行い実験計画の再構築を提案したが、残念ながら不採択という結果となった。本来の予定では不純物原料をファイバー状にしてMO-CVD原料に使用し、ZnO薄膜のドーピング特性の検証、そしてa軸に配向性制御したZnO薄膜を活性層に用いたZnO-TFTを試作する計画であった。24年度が研究の最終年度であるととから、本来の計画を取り戻すことは極めて困難であるため、a軸に配向性制御したZnO薄膜を活性層に用いた高移動度ZnO-TFTを試作することに特化して研究を取り纏めていく事を考えている。
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