本年度は、非結合系マルチコア光ファイバの結合特性を明確化するとともに、クロストーク解析モデルを確立することを目標とした。具体的には、モード結合モデル及びパワー結合モデルの適用性について調査し、伝搬方向の不均一性を考慮した新たな理論構築を行った。まず、マルチコア光ファイバのクロストーク特性を予測するために、モード結合理論ならびにパワー結合理論に基づく解析モデルを構築した。これらのモデルによってクロストーク特性を算出するには、個々のコアの伝搬定数やコア間の結合係数、更には、結合長を正確に見積もる必要がある。ここでは、有限要素法を導入することによって、これらの諸パラメータの精密な評価を可能とした。次に、モード結合モデル及びパワー結合モデルに光ファイバの曲げやねじれを組み込むとともに、光ファイバの伝搬方向における不均一性をも組み込んだアルゴリズムの開発を行った。実際に、長さ100メートルの7コアファイバのクロストーク特性を評価し、曲げ半径に対するクロストークの変化の傾向が実験結果とよく一致することを確認した。この結果については、IEICE Electronics Expressで報告した。また、クロストークの低減に有効な新構造光ファイバとして、準均一マルチコア光ファイバを提案し、理論と実験による検討結果を、IEICE Transactions on Communicationsで報告した。なお、パワー結合モデルでは、パワー結合係数を適切に設定する必要があることも明らかになり、今後の検討課題とした。
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