24年度には、この接合強度の制御を検討し、目的のウェーハへ機械的に転写するための適度な接合強度と剥離性能を付与する条件の最適化を試みた。初めに、熱酸化膜を用いたフッ酸接合を用いて、次の4つの条件を変えてシェア強度を測定した。1つ目は表面の粗さである。Ra 0.2nm以下では20MPa以上、Ra 0.3-0.8nmの間では2-5MPa程度、Ra 1.0nm以上ではほとんど接合しなかった。2つ目は接合面積である。3mm角のチップを用い、接合面積1mm2ではシャア強度2-5MPa、接合面積2-5mm2ではシャア強度5-20MPa、接合面積9mm2ではシャア強度20MPa以上であった。3つ目はフッ酸の濃度である。0%および10%はほとんど接合しなかった。0.01%では接合強度2-5MPaを示し、0.1-2%では接合強度10MPa以上を示した。4つ目は酸化膜の種類である。熱酸化膜の場合、As depoの状態でも非常に高い平坦性(Ra 0.18nm)と高い密度を示すため接合強度も高い(20-40MPa)。一方、350℃で形成したプラズマTEOS酸化膜の場合、As depoではRa 0.4nm程度であり、CMPによりRa 0.05nm程度に鏡面化処理しないと高い接合強度(10-30MPa)を得られなかった。 ここでは機械的に剥離可能な適度な接合強度を要求している。実際に転写実験を試みたところ、チップの仮接合強度は2-5MPa程度が妥当な値であるという結果を得た。以上の結果を応用して、水溶性のPAI樹脂を用いたセルフアセンブリにより仮接合したチップを目的のウェーハに転写することに成功した。特にPAI樹脂の濃度とPAI樹脂が被着する酸化膜の材質が非常に重要なパラメータであることを追求した。この技術を用いて目的のウェーハにチップを転写後、TSV形成することまで達成することができた。
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