研究課題/領域番号 |
22360141
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
小楠 和彦 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (20022246)
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研究分担者 |
李 洪譜 静岡大学, 工学部, 准教授 (90362186)
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キーワード | カルコゲナイドガラス / 非線形デバイス / 細線化導波路 |
研究概要 |
本研究は、高非線形Ag-As-Seカルコゲナイドガラスを用いて、デバイスを構成する基本要素の光導波路を細線化して新しい集積回路型の非線形光デバイスの実現を目指すものである。単一モードの細線化導波路の作製に必要なドライエッチング(反応性イオンエッチング:RIE)装置が何とか利用できるようになったので、導波路作製技術を確立し、デバイスに応用することを最優先課題とした。 細線化導波路は、下部クラッドのシリコン酸化膜(SiO_2)上にAg-As_2Se_3方形誘電体導波路を形成したものであり、電子ビームリソグラフィとRIEを用いて製作した。先ず、蒸着とフォトドーピングにより、酸化膜上にAg-As_2Se_3膜を堆積する。更にその上に電子線レジストをスピンコートし、必要なパターンに応じて電子ビームで描画する。露光後、現像により電子ビームを照射した部分が取り除かれ、レジスト膜にパターンが転写される。次にRIE装置によりレジスト開口部をエッチングして、基板面に垂直方向に溝を掘りクラッド部を形成する。反応ガスにはCF_4とO_2を用い、導波路作製に最も適した条件(ガス流量、投入電力、エッチング圧力、エッチング速度)を実験的に明らかにした。導波路は綺麗にできるももの、レジストを除去する際、長い導波路の所々で剥離が生じた。方形誘電体導波路の場合、導波路と下部クラッドの接触面積が狭く付着力が弱くなるので、この剥離を防ぐこととはできなかった。稀に長さ1cm程度の導波路が得られたので、レーザ光を入射して導波実験を行った。異常分散領域の調整不足と長さ不足のために、スーパーコンティニュームの発生には至らなかった。 方形誘電体導波路型の細線化は無理であるので、接触面積の広いストリップ装荷導波路或いはリブ導波路に切り替える必要がある。そこで、これらの導波路の設計を行い、次のステップの準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
各種光デバイスの基本は細線化導波路で、それは下部クラッド上に堆積した方形誘電体導波路である。その導波路の付着力が弱いために、微細加工プロセスの段階で導波路が部分的に剥離すると言う問題が発生した。長さが1cm位の導波路であれば、たまに綺麗な細線化導波路が得られる。しかし、歩留まりが悪く、デバイスに応用するのは困難と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
方形誘電体導波路では下部クラッドと導波路が接する面積は幅が1ミクロン程度と狭くなり、HMDS塗布による密着性向上処理を行っても、デバイス全面に渡って剥離を完全に防ぐことは難しい。これまでの経験によると、剥離を防ぐには導波路とクラッドの接触面積を大きくすることが最も効果的である。従って、当初目指した方形誘電体導波路は断念し、溝膜導波路を変形したストリップ装荷導波路やリブ導波路に変更し、非線形光デバイスの実現を目指すことにする。
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