基板に方形誘電体導波路を堆積させる細線化は、接触面積が狭いために付着力が弱く、剥離が起こってしまう問題が生じた。そこで、接触面積が広く、且つ標準的なフォトリソグラフィ技術で作製できるストリップ装荷導波路に変更し、リング共振器や方向性結合器等の非線形デバイスの実現を目指した。 リング共振器は方向性結合器を利用しており、フォトリソグラフィでは加工精度が低くその所望な特性が達成できないので、方向性結合器の代わりに2x2の多モード干渉(MMI)カプラを用いた。そこで、改めてリング共振器の設計をし直し、色々なカプラ長のリング共振器を作製した。波長可変レーザを用いて、透過パワーの波長依存性を測定し、最適なカプラ長と使用導波路の等価屈折率(規格化伝搬定数)を求めた。試作したデバイスに400ピコ秒パルスを入射させて、非線形実験を行ったが、励振効率が低く、光双安定性は観測されなかった。 非線形MMIカプラに連続(CW)光とバルス光を入射したときの入出力特性を、それぞれビーム伝搬法とモード結合理論を用いて数値的に明らかにした。CW励振の場合、入射光強度を増加させていくと、カプラの長さに応じて、2つの出力ポート間で出力が切り替わる多重スイッチングが生ずることを見出し、そのスイッチングパワーを明らかにした。パルス解析では、非線形屈折率効果、4光波混合、モード間の群速度差を考慮してモード結合方程式を導出し、スプリット・ステップ・フーリェ法を用いて数値的に解いた。カプラ長と入射パルス幅を変えたとき、出射パルスの波形がどのように変化するか数値的に調べた。パルス幅がサブピコ秒になると、群速度差と非線形性の相互作用により一種の変調不安定、即ちスペクトルが広がり、時間波形が不安定になることを見出した。また非線形方向性結合器との関連性も明らかにした。
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