平成22年度は、近接場光及び表面プラズモンを用いて、電子デバイスと光デバイスの機能を融合させた光・電子融合素子開発に向けた基礎技術の検討を行い、(1)と(2)に記載する結果を得た。 (1)ウィスパリングギャラリーモード(WGM)変調器の開発: 2つの異なった角度から、直径10μmの誘電体微小球に、レーザ光を照射し、球内部にWGMを励起できる系を作製した。本系を用いて、波長の僅かに異なる2つの光を異なった角度から球体に入射することにより、微小球中に2つの波長のWGMが発生することを確認できた。さらに、当該WGMにより微小球表面に発生した近接場光を光ファイバで取込み、光ヘテロダイン検波を行い、RF周波数の信号(2つの波長(周波数)の差周波数のビート信号)を確認した。さらに、周波数多重変調された光を球へ導入し、光ヘテロダイン検波により、WGMを介して多重信号が伝達されることを確認した。今後、本実験系をSi基板上にマイクロスケールで作製した光集積回路の開発へ展開する予定である。 (2)表面プラズモンを利用した光検出器の開発: 金属薄膜をSi基板上へ形成し、さらに当該金薄膜上に1300-1550nm帯に局在型の表面プラズモン共鳴ピークを有する金ナノロッドを塗布したショットキーダイオード型の光検出器を作製した。本検出器に1300~1550nmの光を入射し、金ナノロッドの無い場合に比べて、金ナノロッドのある場合には、検出される光誘起電流が2倍程度になることを確認できた。これにより、局在型表面プラズモン共鳴を応用した光検出器の基本構造を作製できた。本構造を基本に、今後ナノスケールの光検出器を開発する予定である。 これらの実験は開発順序が一部前後したが、概ね計画通りに進捗したと言える。また、上述した成果について、後述するように、学術論文誌及び国際会議等で発表した。
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