研究課題/領域番号 |
22360145
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
安田 雅昭 大阪府立大学, 工学研究科, 准教授 (30264807)
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研究分担者 |
多田 和広 富山高等専門学校, 電気制御システム工学科, 助教 (90579731)
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キーワード | 電子ビーム / ナノカーボン / 照射効果 / 構造制御 / ナノメカニクス / 電子励起 / 分子動力学法 |
研究概要 |
ナノカーボン材料の電子ビーム照射による構造変化を制御するための基礎的知見を得ることを目的に、電子衝突過程を確率論的に組み込んだ分子動力学法により、電子照射による構造変化過程の照射条件依存性を解析した。 多層カーボンナノチューブを試料として電子ビーム照射による構造変化を分類し、構造変化の照射エネルギー依存性についてのデータを蓄積した。また、グラフェンを試料として電子ビーム照射による切断加工のシミュレーション解析を実施し、照射条件による加工形状の違いを評価した。さらに、孤立したナノカーボン材料と基板上のものに対して電子ビーム照射による構造変化の解析結果を比較し、基板からの後方散乱電子が構造変化に及ぼす影響を考察した。以上のデータは、所望の構造にナノカーボン材料を加工する条件探索において重要な基礎的データである。 次に、電子ビーム照射を受けた単層カーボンナノチューブの引張りと捻り強度の解析を行い、照射後の構造と機械的特性の相関を考察した。ナノチューブに照射欠陥が多く含まれるほど機械的強度が低下すること、また、照射時の試料温度が上昇するほど熱運動がダングリングボンドの再結合を促進し、試料がチューブ構造を維持しやすくなり、結果として、弓張りなどの機械的強度が大きくなることが分かった。これらの結果は、ナノカーボン材料の機械的特性を制御する上での重要な基礎的データとなる。 最後に、シミュレーションモデルに電子励起過程を導入し、低エネルギー電子照射によるナノカーボン材料の構造変化を再現できるモデルの構築を行った。このモデルを用いたシミュレーション解析より、単層カーボンナノチューブのチューブ径やカイラリティにより、欠陥生成率が異なることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的として掲げた5つの実施項目について、3項目までは順調に研究成果が上がっており、研究の最終段階に入っている。また、残りの2項目についても、研究を着手し始めており、最終年度に成果が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的に揚げた実施項目の中で「カイラリティ制御」と「電子顕微鏡像化」の理論解析を中心に実施する。 カイラリティ制御では、異なる温度条件や応力印加条件の下で、ナノカーボン材料の電子照射シミュレーションを実施し、カイラリティ変化の起こる条件探索を行う。 電子顕微鏡像化では、様々なナノカーボン材料について電子照射シミュレーションを実施し、その結果としての結晶構造を電子顕微鏡像に変換するシミュレーションを行う。
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