研究課題/領域番号 |
22360148
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研究機関 | 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所 |
研究代表者 |
柴田 浩行 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子光物性研究部, 主任研究員 (60393732)
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キーワード | 二硼化マグネシウム / 単一光子検出器 / ナノ細線 / 超伝導材料 / 保護膜 / MBE / 超薄膜 / 赤外線 |
研究概要 |
本研究課題は金属・金属間化合物の中で最も高いT_c=39Kを有する二硼化マグネシウムを用いて、赤外域における超伝導ナノ細線単一光子検出器を実現することを目的とする。 前年度までに、無機材質(アモルファスカーボン)をマスクに利用した新しい単一ナノ細線作製法を確立し、この手法を用いて作製した幅100nm、厚さ10nmのMgB_2ナノ細線は、赤外域の単一光子を検出可能なことを確認している。平成23年度は超薄膜の高品質化を中心に取り組んだ。まず、前年度導入した新型レート制御装置を用いて低速度成長によるマイグレーションの促進を図った。しかし、成膜速度を5nm/minまで低下させても有意な膜質の向上は見られなかった。成長速度の更なる低下はレートが不安定となるために中断し、別手法として高温アニールを検討した。その結果、ラピッドアニール(昇温、降温速度500℃/min)が膜質向上に有効であることを見出した。ラピッドアニールによってT_cは4-5K程度上昇し、断面TEM観察では結晶化が促進されている。但し、EDS断面分析では膜表面5nm程度は酸化され、Mgが減少している。実際、膜厚が薄くなるとアニールによる再現性、均一性が低下する。そこで更にSiO_2、AlNなどの保護膜を検討した。現在、膜厚10nmでT_c=21-25Kの保護膜付MgB_2膜が再現性良く作製出来ており、条件の最適化を進めている。一方、メアンダ加工については本研究で開発したアモルファスカーボンを用いたリフトオフ法を中心に検討した。しかし、幅100nmのメアンダ細線を再現性良くリフトオフできる条件が現状では得られておらず、他の手法も含めて検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究によって、本研究最大の課題であるMgB_2ナノ細線による赤外域単一光子検出はすでに達成した。MgB_2ナノ細線作製のために、無機材質(アモルファスカーボン)を用いたリフトオフ法を新たに開発した。また、超薄膜の膜質向上についても着実に進展している。材料パラメータから予測した性能の実現には更なる性能向上が必須であるが、全体としてみればおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針は、ラピッドアニールにより膜質が向上したMgB_2超薄膜を用いて、メアンダ型単一光子検出器を実現することを第一とする。メアンダ加工にはリフトオフ法を予定していたが、現時点では成功していない。そこで、今後はAlN保護膜付のミリング法についても検討する。ラピッドアニールの最適化と共に高性能メアンダ型単一光子検出器が実現すれば、当初の研究計画通り時間相関測定・量子暗号通信応用を行う。一方、NbNナノ細線単一光子検出器を超える性能が得られなかった場合は、性能の向上、特に超薄膜の更なる膜質改良に注力する。具体的には、MEE(Molecular-Migration Epitaxy)法を中心に検討する。
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