研究概要 |
二硼化マグネシウム(MgB2)は高い超伝導転移温度(Tc=39K)を有する次世代の超伝導エレクトロニクス材料である。本研究では、MgB2ナノ細線からなる超伝導ナノ細線単一光子検出器(SSPD)の開発を目的としている。前年度までに、①無機材質を用いた新しいリフトオフ法の確立、②幅100nm、厚さ10nmのMgB2ナノ細線における赤外域単一光子検出、③膜質向上のためのラピッドアニール法の確立、④MgB2膜の特性劣化の原因となる表面酸化(約5nm)の発見、等の結果を得ている。平成24年度は、受光面積を増大するためにメアンダ型に改良したMgB2-SSPDの開発を進めた。①で開発したリフトオフ法を用いたメアンダ細線加工を試みたが、パタンが複雑なためにリフトオフされない部分が残ることが判った。そこで保護膜付のArミリング法を検討した。保護膜が無い場合、Arイオン照射によるダメージのために、ナノ細線を幅300nm、厚さ10nmより小さくすると超伝導特性が劣化する。様々な保護膜を検討した結果、MgB2成膜後にin-situでAlNを成膜することによって、ダメージ保護およびMgB2表面酸化を防止することに成功した。本手法を用いて幅135nm、厚さ10nmのメアンダ型MgB2-SSPDを作製した。Tc=23K, Jc=4.1×106A/cm2であり、Tcは3K、Jcは4倍向上している。光学測定により波長405nmから1550nmにおいて単一光子検出可能であることを確認した。1550nmではバイアス電流減少と共に光検出効率は指数関数的に低下するが、405nmでは光検出効率がほぼ飽和している。これより、波長405nmの単一光子検出には本検出器の細線サイズで充分であるが、光子エネルギーの低い波長1550nmにおける単一光子検出効率を高めるにはさらにナノ細線の微細化を進める必要があることが判明した。
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