光線空間の冗長性を利用し,少ない取得情報で光線空間を構築する手法を研究した.これまでに,直線カメラ配置で直交光線空間を取得するとき,光線空間の直線構造に着目し,ラドン変換を用いた光線空間の高能率取得方法を提案した.本年は,円形カメラ配置の場合の極座標光線空間の高能率取得を目指し,ラドン変換に代わる新しい手法を研究した.極座標光線空間のEPIを様々な振幅と位相の正弦波上で積分して,振幅・位相平面の画像に変換し,これから元のEPIを復元する手法を開発した.極座標光線空間では1点を通る光線の軌跡はEPI 上のサイン曲線となることを利用し,円形カメラ配置の場合の積分変換を行うこととした.EPIを入力画像とし,その上に振幅,位相を与えて一周期分のサイン曲線を描き,サイン曲線上の画素の輝度値の積分を求める.これによって,横軸を位相,縦軸を振幅とする位相-振幅平面上の1点が得られる.これを繰り返し,振幅は1画素刻みでEPI の縦サイズの半分まで,位相は1画素刻みでEPI の横サイズの分だけ変化させると,位相-振幅平面の出力画像が得られる.このとき,振幅をEPI の縦サイズの半分しか変化させないため,出力画像の縦サイズはEPI の半分となる.サイン曲線の上り部分のみ,及び下り部分のみを用いて積分変換した2枚の出力画像を作り,それらを結合したものを変換画像とすることにより,EPIと同じサイズの変換画像を得ることができた.逆変換では,まず任意の画像を復元画像の初期画像とする.この初期画像に上記の積分変換を行い,実際の変換画像との差を求め,その差を初期画像上のサイン曲線の上り部分と下り部分に加算する.この操作をすべての位相と振幅に対して行うと,復元画像が更新される.この操作を繰り返すことで元のEPI を復元することができた.本手法で構築した光線空間から良好な自由視点画像が生成できた.
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